揺れる為替、日本経済を翻弄 変動相場制に移行50年

東京, 2月19日, /AJMEDIA/

 為替相場が自由に変動する「変動相場制」に日本が移行してから、14日で50年が経過した。移行により、国際的な資本移動が活発になった一方、為替相場の変動が企業や家計にも影響を及ぼし、日本経済を翻弄(ほんろう)した。
 第2次世界大戦後、円相場は長らく1ドル=360円に固定されていた。ただ、欧州と日本の経済復興やベトナム戦争の泥沼化を背景に米国の国際収支が悪化。ドルや保有する金の海外流出が止まらず、1971年8月、当時の米ニクソン大統領がドルと金の交換停止を突如宣言する「ニクソン・ショック」が起きた。主要各国は対ドル相場を切り上げ、同年12月に「スミソニアン体制」の下で円は308円に決まった。
 しかし、その後もドルの信認低下は止まらず、72年6月には英ポンドが変動相場制へ移行し、73年2月には円も追随。その翌月に円は250円台に急騰したほか、主要国通貨すべてがドルに対して変動相場制を採用した。榊原英資元財務官は、「固定相場制が維持できなくなったことで、各国はやむを得ず移行に踏み切った」と振り返る。
 ドル高是正を狙った85年の「プラザ合意」の約1年後には150円台と、90円程度急速に円高が進行。ドル売りが一段と加速した95年には79円台まで暴騰した。河合正弘東京大学名誉教授は「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を大きく超えた円高が長期間続いたことは日本経済にとって問題だった」と語る。
 2008年のリーマン・ショック以降は、ドル売り・円買いが強まり、東日本大震災が発生した11年には75円32銭の戦後最高値を付けた。日本の輸出企業を苦しめた過度な円高は、13年に就任した黒田東彦日銀総裁が大規模金融緩和を開始したことで是正された。
 しかし、22年は日米の金融政策の違いを背景に、内外金利差の拡大に着目した円売りが過熱し、同年10月に151円台と約32年ぶりの水準まで急落。輸入物価高が企業や家計を苦しめた。円の総合的な実力を示す実質実効為替レートは、22年10月に73.7(2020年=100)と70年8月(73.45)以来約52年ぶりの低さとなり、変動相場制移行前の水準に沈んだ。

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