急転直下の更迭、混迷に拍車 判断遅れ、続投方針の表明直後―「予備軍」焦点、岸田首相正念場

東京, 11月12日, /AJMEDIA/

 岸田文雄首相が閣僚交代に再び追い込まれた。「死刑のはんこを押すときだけニュースになる地味な役職」と語った葉梨康弘法相を急きょ更迭。決断が遅れたあおりで東南アジア歴訪への出発がずれ込み、政権の混乱ぶりを印象付けた。野党が辞任を迫り、「更迭予備軍」とされる閣僚はまだ控えており、支持率下落にあえぐ岸田内閣は出口が見えない状況だ。
 ◇新事実判明
 首相は11日昼すぎまで葉梨氏を続投させる方針を示していた。参院本会議で「説明責任を徹底的に果たしてもらわなければならない」と、野党の罷免要求を拒絶。国会から首相官邸に戻った際も、記者団に「きのうから申し上げている通り」と、辞任させる考えがないことを重ねて強調した。
 だが、同時並行で開かれていた衆院法務委員会で、葉梨氏は厳しい追及にさらされる。過去にも「死刑はんこ」と同じ趣旨の発言を、宮沢洋一自民党税制調査会長ら3人の同党議員パーティーなどで行っていた事実を明らかにした。
 これを受け、更迭にかじを切ったもようだ。最終的に衆院法務委の直後、葉梨氏が辞任の意向を水面下で首相に伝達。首相は官邸の執務室から公明党の山口那津男代表に午後1時47分、電話で「辞任させる方向で考えている。後任はきょう中に決める」と連絡した。首相がようやく昼食を取れたのは午後2時ごろだった。
 国会答弁で閣僚交代を否定し、その直後に更迭に踏み切ったのは、山際大志郎前経済再生担当相の辞任時と同じ対応。「国会軽視」のそしりを免れない。最初の訪問国カンボジアに向けて午後3時に政府専用機で羽田空港を出発する予定を遅らせたことで、同行する官僚や専用機を運航する自衛隊にも影響が及んだ。
 ◇震源はお膝元
 更迭の決断は、与党でも強まった批判に加え、首相自身が葉梨氏の対応に不信感を募らせたためとみられる。
 葉梨氏は10日夜に首相とひそかに進退を相談し、首相は「説明責任を徹底するように」と指示した。だが、葉梨氏は「死刑はんこ」発言を過去に3回していたことは、この段階で報告しなかった。11日の衆院法務委で、葉梨氏は「後出しで説明をするつもりはない」と釈明に追われた。
 首相の難局は続く。今後は「政治とカネ」の問題で野党の辞任圧力を受ける寺田稔総務相と秋葉賢也復興相の進退を巡り、引き続き難しい判断を迫られそうだ。
 葉梨氏も寺田氏も岸田派の所属。首相のお膝元で相次ぐ問題に、自民党内の視線は厳しい。葉梨氏の更迭論は10日の時点で広がっており、「安倍内閣なら即断していたはずだ」「最も政局に弱い内閣だ」との指摘が出ている。
 「2人までは耐えられるが、3人になったらきつい」。ある自民党幹部はこう語り、これ以上の「ドミノ辞任」を阻止することが政権の「防衛ライン」だと位置付けた。党内には「総裁選を考えなければならない」(関係者)と首相退陣を想定する声も出始めた。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts