対ロ制裁下、異例交渉が妥結 サケ・マス漁、権益確保

東京, 4月24日, /AJMEDIA

 日本の200カイリまでの排他的経済水域(EEZ)内で行うサケ・マス漁をめぐるロシアとの漁業交渉は22日深夜、実質的に妥結した。ウクライナ侵攻を受けて日本がロシアに制裁を科すなど、両国関係が悪化する中で行われた異例の交渉は難航が予想されたが、2022年の漁獲枠は計2050トンと昨年と同水準で決着して権益を確保した形だ。
 北海道の鈴木直道知事は「非常に厳しい交渉だったが、盛漁期を逸することなく交渉が実質的に妥結し深く感謝する」とのコメントを発表。道東海域で操業する漁業者も「交渉がまとまって良かった」と話し、今年も出漁できることに安堵(あんど)した。
 サケ・マス漁は漁獲量が年々減少し、ロシアへの協力費支払いが漁業者にとって重い負担となっていた。交渉では、漁獲実績に応じて支払う協力費の下限額を2億円と、前年から6000万円減額。前年31隻だった出漁隻数は今年19隻に減っているが、水産庁は「負担が下がる」とみている。
 日本は欧米と協調し、ロシアへの経済制裁や外交官の追放に踏み切った。一方のロシア側も対抗措置として日本を「非友好国」に指定するなど、一時は交渉の開催も危ぶまれていた。日本からの協力費支払いについても、「制裁との整合性が取れない」として、一部から反対の声が上がっていた。
 政府関係者はこの状況下で交渉が行われたことについて、「ロシア側にとってメリットがある漁業分野で、没交渉となるのを防ぎたかったのではないか」と指摘する。日本としても「領土問題を含め、いろんな問題が関係している」(金子原二郎農林水産相)ため、交渉の枠組みを維持することが必須となっていた。さらに、漁業者の権益を守ることも重要で、水産庁は「協力費はあくまでサケ・マスの資源管理のため。交渉結果は漁業者の権益維持、確保につながる」という。
 今回の交渉妥結は、この先に控える北方領土の貝殻島周辺でのコンブ採取に関する民間交渉などにも好影響をもたらすとの期待がある。

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