天ぷら油を航空燃料に 脱炭素化へ、原料「争奪戦」

東京, 1月2日, /AJMEDIA/

 「使い終わった天ぷら油で空を飛べる社会を」―。航空機の二酸化炭素(CO2)排出量を抑制する流れが世界的に広がる中、天ぷら油などの廃食油を原料に低炭素の航空燃料を造ろうとする国内企業の動きが2023年は本格化しそうだ。ただ、高品質な日本の廃食油を巡っては、既に海外燃料大手が大量調達を進めており、取引価格も急騰。「争奪戦」の様相を呈している。
 鉄道などと比べCO2排出量が多い航空機での移動は近年、「飛び恥」などと欧米中心に批判が拡大。国際民間航空機関(ICAO)は22年秋、国際線の航空機が排出するCO2を50年までに「実質ゼロ」とする目標を設けた。切り札とされるのが、廃食油などを原料とする「持続可能な航空燃料(SAF)」だ。日本政府は30年に国内航空会社の使用燃料の10%をSAFに置き換える計画だが、現状では欧米数社からの供給に頼らざるを得ず、「安定調達には国産化が不可欠」(航空大手)とされる。
 こうした中、日揮ホールディングス(HD)は、コスモ石油、バイオ燃料製造レボインターナショナルと共に堺市にSAF製造プラントを新設し、24年度にも生産を始めて年約3万トンの供給を計画している。
 カギを握るのが原料となる廃食油の確保だ。日揮HDなどは三菱地所と協力し、23年3月から同社の商業施設の飲食店から出た廃食油の提供を受ける予定だ。既に関西国際空港などを運営する関西エアポートからも提供を受けている。今後は堺市との連携も検討し、家庭からの回収も視野に入れる。日揮HD担当者は「多くの企業や市民の方に興味を持ってもらい、取り組みを広げていきたい」と意気込む。
 ただ、廃食油確保では、海外勢が先行している。業界団体の全国油脂事業協同組合連合会によると、21年度は事業系廃食油の3割に当たる12万トンが輸出に回り、17年度(6万トン)比で倍増した。輸出価格も上昇し、直近の22年11月は1キロ当たり約190円と、2年前の水準(80円程度)の2倍超となっている。
 主な供給先とされるのが欧州の再生可能燃料大手ネステ。23年末までにSAFの生産を年約10万トンから約150万トンに増やす計画だ。
 海外企業が勢いを増す中、日本では廃食油の国内での活用を促すため、「国による支援が必要」(業界関係者)との声が上がる。また、従来廃食油は大半が飼料原料に再利用されてきたことから、供給の偏りを防ぐ仕組みが必要との指摘もある。

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