地方経済への影響拡大 燃料高騰、運送・宿泊業直撃

東京, 11月11日, /AJMEDIA/

原油高の影響が、地方経済にも拡大している。ガソリンや軽油の価格高騰による運送業への影響のほか、重油など他の燃料も軒並み値上がりしていることで、漁船や温泉施設などのコストも上昇。各地の企業から「ただでさえ厳しい局面に燃料高が追い打ちをかけている」(長野県の運送会社)といった悲鳴が上がっている。
 8日時点のレギュラーガソリン店頭価格が175円60銭と、離島の多い長崎、鹿児島に次いで全国で3番目に高い長野県。県内を地盤に70年以上運送業を営む長野運送(長野市)では、トラックの主要燃料である軽油の価格が「1年前と比べ1.5倍に跳ね上がった」(松本清社長)という。燃料費全体では3割増で、「上半期の営業利益が前年同期比で11.2%減」(同)という厳しい状況だ。
 赤潮が原因とみられる被害に悩まされる北海道。ここでも漁船の燃料高騰が、漁業者に打撃を与えている。釧路市東部漁業協同組合の担当者は「赤潮で秋サケが取れない状況に、燃料高騰はダブルパンチだ」と話す。従業員の人件費削減も難しい中、「漁網や輸送用発泡スチロールなどの資材も値上がりしている」(えりも漁業協同組合)といい、事業環境の厳しさは増している。
 緊急事態宣言などの全面解除を受け、新型コロナウイルス禍からの回復を目指す観光業にも、原油高が影を落とす。札幌市内のホテル「定山渓万世閣ホテルミリオーネ」では、温泉の温度調節に使うボイラーの使用時間を短縮するため、温泉の熱を活用する。それでも、例年の冬場に月100万円かかっている重油代が「今季は120万円程度に上がる」(施設担当者)見通し。今後は暖房用の電気代も上がるとみられ、担当者は「じわじわと影響が出てきそうだ」とため息をつく。
 燃料費高騰をカバーするには価格転嫁が必須。しかし、「顧客も円安による原材料高などに苦しんでおり、値上げには応じてもらえない」(長野運送の松本社長)のが実態だ。一方で、「お客さまに迷惑が掛かるような(経費の)節約はできない」(北海道のホテル運営会社)との思いもある。経済産業省は相談窓口を開設し、資金繰り支援などに万全を期す構えだが、事業者にとって厳しい冬となりそうだ。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts