各党、歳出拡大競う 財源論、深まらず―参院選

東京, 6月30日, /AJMEDIA/

 参院選の各党の公約には、防衛費増額をはじめ少子化対策などでも歳出拡大につながる項目が並ぶ。与党の自民、公明両党は財政健全化よりも物価高対策やコロナ禍からの経済回復を優先させる姿勢を強めている。野党では、国民民主党やれいわ新選組が国債発行による「積極財政」を前面に掲げているほか、各党とも物価高対策として消費税減税・廃止を主張。一方で、歳出拡大に見合う財源確保の議論は深まっていない。
 ◇「国債」頼み
 自民は選挙公約に、防衛費増額のほか、脱炭素分野の成長に向け、新たな国債「GX経済移行債」(仮称)で20兆円規模の資金を確保すると盛り込んだ。また、少子化対策や子育て支援でも「将来的に予算の倍増を目指す」と踏み込んだ。公明は、出産育児一時金の増額や高校3年生までの医療費無償化を掲げた。
 立憲民主党は、子ども・子育て関連予算を倍増し、国内総生産(GDP)比3%台に増やすとしている。国民は、「教育国債」を創設し、教育・科学技術関連予算を年間10兆円規模に倍増すると主張。日本維新の会は、教育の完全無償化や出産費用の実質的な無償化を提唱する。
 ただ、与野党とも「GX経済移行債」や「教育国債」の償還方法を含めた財源確保策にはほとんど踏み込んでいない。
 ◇野党、法人税上げ主張
 国の借金である国債の残高は2022年度末に1029兆円まで拡大する見込みだ。コロナ対応の長期化で財政状況は一段と悪化している。政府が今月閣議決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」では、国と地方の基礎的財政収支(PB)を黒字化する目標について、25年度としてきた達成期限が明記されず、財政健全化に関する表現が後退した。
 自民は公約に「経済成長を実現し、財政の健全化を進め、将来の安心を築く」と記載。公明も「経済再生と財政健全化の両立を果たしていく」としているが、具体的な道筋は不明だ。
 共産党は「野放図な国債発行で何でもできるという立場には立たない」と強調。法人税率引き上げなどで19兆円の財源を確保し、消費税減税などを実行するとしている。立民、社民党も大企業や富裕層への課税強化を掲げる。NHK党は、税金や社会保険料を引き下げ、その分の政府支出を減らすべきだと主張している。
 内閣府が1月に公表した中長期の財政試算では、PBの25年度黒字化は可能とされた。ただ、名目3%超の高い経済成長を前提とするなど、目標設定の甘さを指摘する声は多い。維新は「現実的な目標期限の再設定」を求める一方、れいわは目標の破棄を主張。立民と国民は、経済財政の将来推計を行う中立的な独立機関の設置を提案している。

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