円安、再び急加速 日銀総裁発言も波乱要因に

東京, 6月10日, /AJMEDIA/

 外国為替市場で小康状態にあった円安が、今月に入り再び急加速している。円の対ドル相場は連日のように20年ぶりの安値を更新し、年初からの下落幅は20円近くに達した。日銀の黒田東彦総裁はコロナ禍からの景気回復を支えるため、大規模金融緩和の継続が必要と訴える。一定の円安は覚悟の上とみられるが、こうした総裁の発言自体が波乱要因となっており、日銀の政策運営は難しさを増している。
 ロシアのウクライナ侵攻で原油などの価格が高騰する中、円安が輸入物価の上昇に拍車を掛けている。家計や、価格転嫁が難しい中小企業には不満も鬱積(うっせき)する。
 経済同友会が8日に公表した調査結果では、約200人の経営者のうち、現在の円安は日本経済に「マイナス」「ややマイナス」とした回答は計74%に上った。日銀は「円安は日本経済全体にプラス」(黒田総裁)との姿勢を崩していないが、同友会の桜田謙悟代表幹事は「経営者は(業種別の影響など)ミクロで見てほしいと考えている」と述べ、きめ細やかな目配りを求めた。
 円相場は5月中旬以降、米連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げによる米国の景気悪化が懸念され、いったん円高方向に戻す場面もあった。しかし、FRBの金融引き締め姿勢に変更がないと市場が判断したことで、再び日米間の金利差拡大が強く意識されて円安が加速した。
 米国や欧州と異なり、日本経済はコロナ禍前の水準をいまだ回復しておらず、日銀は景気の腰折れを防ぐためにも「強力な金融緩和を粘り強く続ける」(黒田総裁)との立場。日米金利差はさらに拡大する方向で、円は今後も売られやすい環境が続く。
 足元の急速な円安は黒田総裁の発言が材料視されている面も否めない。最近の講演では「家計が値上げを受け入れている」と発言、生活者視点を欠くとの厳しい批判を浴び、撤回に追い込まれた。総裁の発言が信頼を失えば市場は無用な混乱に陥りかねず、日銀には丁寧な説明が求められている。

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