共同声明見直し、慣例化に懸念 「不要な思惑生む」―白川前日銀総裁

東京, 1月24日, /AJMEDIA/

 政府・日銀が2013年に取りまとめた共同声明を巡り、白川方明前日銀総裁に行ったインタビューでの主なやりとりは次の通り。
 ―政府・日銀の共同声明が作成された背景は。
 低成長の原因は物価下落(デフレ)にあり、日銀の金融政策が慎重過ぎるとの批判が強まる中、12年末の総選挙で故安倍晋三氏が率いる自民党が大胆な金融緩和と(上昇率)2%の物価目標導入を公約に掲げ圧勝したことだ。多くの国民が、大胆な政策も試してみる価値があるという気分に傾き、中央銀行として国民の声を全く無視することはできなかった。一方で、公約のような異例な政策を採れば、経済の持続的成長を損なう危険性が高いと判断していたことから、そのバランスをいかにとるか腐心した。
 ―共同声明に2%の物価目標が明記された。
 2%という数字を掲げても、機械的に追求しなくて済むよう柔軟性を確保することが最大の課題で、それに全精力をつぎ込んだ。従って、(硬直的な金融政策を強いられる)政府との「政策協定」ではなく、「政策連携」とした。達成期限について、政府は「2年程度」を主張したが、明らかに不可能であり、結局「できるだけ早期」に落ち着いた。金融の不均衡などのリスク要因の点検も書き込み、柔軟性は確保した。
 ―物価目標の2%という水準は妥当か。
 物価の安定というイメージを伝える上では意味があるが、水準自体には確固とした理論的な基礎はない。日本経済は今後の人口減少を考慮すれば、長い目でみて成長率が下がっていくことは、ほぼ確実だ。日本が目標とすべき物価上昇率は(2%の)欧米などに比べてたぶん低いだろうが、いずれにせよ絶対視は危険だ。
 ―共同声明の見直し論が一部で浮上している。
 見直しには慎重さが必要だ。数カ月程度で結論を得られるような簡単な話ではない。金融政策や物価目標の在り方について、議論が熟すのを待った方がいい。総裁交代のたびに見直しを行うようになると、任期後半にかけて不要な思惑を生み出し、市場が不安定化する。悪しき慣例を残す。
 ―共同声明から10年、政府・日銀が目指す2%の物価目標の持続的な実現には至っていない。
 (大規模緩和という)社会実験をやっても物価は上がらなかったし、潜在成長率は下がった。真の課題に社会のエネルギーが向かわなかったという意味で、10年間という時間を明らかに無駄に費やした。それでも、物価下落が低成長の原因ではないと理解が本当に行き渡ったか、やや疑問だ。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts