公的マネーに「呼び水」期待 スタートアップ投資拡大狙う―岸田政権

東京, 8月28日, /AJMEDIA/

 岸田政権は、看板政策「新しい資本主義」の担い手として、スタートアップ企業を5年で10倍に増やす目標を掲げた。創業期の企業に対する投資の「呼び水」として期待を寄せるのが官民ファンドや年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の公的マネーだ。「GAFA」と呼ばれる米IT大手のような成長企業を育てられるか―。足元の投資環境が悪化する中、政府は起業の環境整備を進める。
 「ベンチャーキャピタル(VC)への、政府によるリスクマネー供給の拡大を図っていきたい」。岸田文雄首相は7月、東京都内で開かれた日本ベンチャーキャピタル協会の総会であいさつし、「GPIFなどの長期運用資金がVCやスタートアップに循環する流れをつくっていく」と官民の連携強化を訴えた。
 国内の新興企業の資金調達では、特に成長段階の後期にある未上場企業に対する資金の出し手不足が指摘されている。官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)は、民間VCが運営するファンドへの出資などを通じ、海外の有力VCや国内外の年金基金などの資金を呼び込みたい考えだ。
 出資の狙いについて、JICで最高投資責任者を務める久村俊幸取締役は「決してイージーマネー(楽に手に入る金)ではない。国内外の機関投資家から資金を受託できるようファンド運用者を支援する」と説明する。
 ただ、世界的な金融引き締めを背景に、投資環境は今年に入って急速に悪化した。新興企業への投資を主力事業とするソフトバンクグループは、投資先企業の価値が大きく目減りし、今年4~6月期決算で国内上場企業として過去最大となる3兆円超の純損失を計上した。
 孫正義会長兼社長は「しっかりと厳選していればこれほどの痛手は負わなかった。(投資を拡大した昨年は)今となってはバブル状態だった」と悔やんだ。傘下の「ビジョンファンド」は昨年、日本国内で初めて投資を実行したものの、既に新規投資を大幅に絞り込んでおり、スタートアップの資金調達には当面逆風が吹く。
 また、大企業がイノベーションを後押しする重要性も増している。ボストンコンサルティンググループのBCGデジタルベンチャーズ日本代表を務める平井陽一朗氏は「大企業によるスタートアップ買収が増えれば、起業もしやすくなる」と指摘している。

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