今後10年が勝敗の分かれ目に 米中緊張、日本に試練―「半導体戦争」著者

東京, 1月2日, /AJMEDIA/

軍拡・経済競争の勝敗を分ける戦略物資である半導体。米国と中国の攻防を描いた「CHIP WAR(半導体戦争)」の著者、米タフツ大のクリス・ミラー准教授は時事通信のインタビューに応じ、「今後10年間、冷戦期以来となる大国間競争が続く」と語った。半導体の生産拠点が集中する台湾、米中双方とつながりが深い日本は、試練に直面すると指摘した。
 ミラー氏は、スマートフォンから兵器まで用途の幅広い半導体について「今後10年の大国間競争が、台湾海峡を巡る米中対立の行方を左右する」と訴えた。バイデン米政権は2022年、半導体分野で自国生産拡大を支援する「攻め」、対中輸出規制という「守り」の戦略に打って出た。
 米国は先端半導体の設計や開発で先行し、中国は苦戦を強いられている。米国が先端製品を保護するために発動した輸出規制に関し、ミラー氏は「中国が5年間に大きな進歩を遂げるのは難しい。10年後も苦労する」と予想。「中国が技術力で米国を抜くとは到底思えない」と明言した。
 一方、中国は世界的に需要が多いパソコンや自動車向けの低価格半導体の量産で巻き返しを急ぐ。ミラー氏は「中国は技術水準の低い半導体に巨額資金を投じている」と説明。半導体を巡って対中包囲網を強化する日米欧や台湾、韓国にとって、中国との価格競争が「次の大きな課題」だと警告を発した。
 米中対立を背景に、世界各国・地域が共存共栄を目指すグローバル戦略は岐路を迎えた。ミラー氏は「日本は地政学的にも軍事的にも中国から挑戦を受けやすい一方、貿易面では中国と関係が深い」とした上で、「急速なデカップリング(分断)は利益にならない」と強調。攻守のバランスの取れた経済安全保障戦略を検討するよう促した。

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