ローカル線再編、将来像カギ 「上下分離」、バス専用道化も

東京, 11月24日, /AJMEDIA/

 人口減少やコロナ禍で鉄道各社の経営が厳しさを増す中、採算悪化が著しいローカル線の再編協議が全国各地で不可避となってきた。ただ、地域住民の廃線への懸念も根強く、協議進展には利用者目線の将来像を示せるかがカギとなりそうだ。
 10月初め、2011年の新潟・福島豪雨で一部不通となっていたJR只見線が11年ぶりの全線再開を果たした。廃線危機を救ったのが、自治体が線路などのインフラを保有・管理し、運用は鉄道会社が担う「上下分離」と呼ばれる手法だ。
 鉄道会社は減価償却費などの負担がなくなる上、自治体がインフラ使用料を減免すれば経常収支も改善できる。国内ではまだ例が少なく、JR東日本では初めてとなる。深沢祐二社長は他地域へのモデル化も意識し「しっかりと成果を出していくことが重要だ」と語る。
 国と自治体、鉄道会社に不採算路線の再編協議を促した国土交通省の有識者検討会による7月の提言では、上下分離を選択肢として挙げた。同省はこの方式を採用する自治体を補助金や税軽減などで後押しする構えだ。
 ただ、「秘境路線」としてファンも多い只見線のように他の路線でも観光客を増やせるとは限らない。自治体の費用負担が必要なため、野村総合研究所の川手魁シニアコンサルタントは「利用者や観光業以外の住民の理解を得られるかが課題となる」と指摘する。
 廃線にしてバスに転換するのも有力な選択肢となる。特に線路があったところなどに専用道を整備するバス高速輸送ステム(BRT)は、経費削減とニーズに応じた運行の両立手段として注目される。一般道と比べ自動運転化も容易で、JR気仙沼線のBRTでは12月から導入される予定だ。
 一方、JR東・西日本のローカル線沿線住民約1万人への野村総研の調査では、75%が最寄り路線を「ほぼ利用しない」と答えたにもかかわらず、52%は「地域住民の心の支え」だと回答。不採算路線でもシンボル的価値は大きく、廃線への心理的な壁は高い。
 ローカル線の再編協議を巡り、川手氏は「交通網を利用者の目線で再構築する前向きな議論だと説明していく必要がある」と訴える。複数の公共交通をITで結び一体的サービスとして提供する仕組みの整備や、まちづくりとの連携も重要となる。

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