コロナ貸し付け、返済「長期戦」 1.4兆円、10年で回収―厚労省

東京, 2月5日, /AJMEDIA/

 新型コロナウイルスの影響で経済的に困窮する世帯に、国が最大200万円の生活資金を貸し付けた特例貸付制度の返済が1月から始まっている。貸付総額は約335万件の1兆4268億円超と、過去の類似制度と比べても最大規模。各地の社会福祉協議会は今後10年かけて返済を求めるが、回収見通しは不透明で、厚生労働省幹部は「長期戦になる」と話す。
 特例貸し付けは2020年3月~22年9月、各地の社協が窓口となり実施。スピードを重視し、収入を証明する書類の提出は求めず、コロナ禍前後の収入額と減った理由を申告すれば、借りられるようにした。
 今回の制度では低所得者に対して実質的な給付となるよう、住民税非課税世帯などの返済を免除する仕組みを導入。同省によると、昨年11月末時点で免除に関する案内を発送した255万4571件のうち、約4割の98万4309件が申請した。
 一方、免除対象ではなくても経済的に苦しく、返済が難しいケースもある。こうした人の生活立て直しに向け、就労など自立に向けた長期的なサポートも必要となる。
 ただ、過去の事例を見ると厳しい現実も。1995年の阪神淡路大震災では、災害援護資金として被災者に約1300億円が貸し付けられたが、30年近くたった昨年、神戸市や兵庫県などは返済が滞っている住民への債権を放棄。計約18億円の肩代わりを決めた。神戸市は回収経費が返済見込み額を上回ることなどを理由に挙げた。
 2011年の東日本大震災でも最大20万円の特例貸し付けを行ったが、岩手、宮城、福島3県の社協によると、総額96億2894万円のうち21年度末時点で約26億3000万円が未返済。住所不明者の追跡に苦慮している。
 ある県社協の担当者は、震災とコロナの特例貸し付けは「本人の生活や借金の状況を確認できないまま実施した」と指摘。「被災地だけの問題とされていたが、コロナで全国共通となった。国は制度設計の見直しを議論すべきだ」とも話す。
 今後の回収について、別の県社協の担当者は「社協だけでなく自治体の自立相談支援を含めた体制整備が必要だ」と強調。返済に向けたバックアップを訴える。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts