ウクライナ危機めぐり神経戦 産油国と消費国―米は異例の備蓄放出

東京, 4月3日, /AJMEDIA/

日米欧など主要な石油消費国が加盟する国際エネルギー機関(IEA)は1日、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰を受け、加盟国が協調して石油備蓄を追加放出することで合意した。一方、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」は大幅増産に慎重姿勢を貫く。産油国と消費国の神経戦は続きそうだ。
 「原油高は産油国や大企業が迅速に供給を増やしていないことが原因だ」。バイデン米大統領は繰り返し大幅増産を促してきたが、OPECプラスは3月31日の閣僚級会合で小幅増産ペースの維持を決めた。しびれを切らしたバイデン氏はその直後に、米国だけで石油備蓄から過去最大規模の計1億8000万バレルを半年間かけて放出すると表明。増産しない米石油・ガス会社に罰金を科す異例の対策に踏み切る構えを見せた。
 原油相場は、新型コロナウイルス流行後のサプライチェーン(供給網)混乱に加え、ウクライナに侵攻したロシアに対する経済制裁で供給が滞るとの懸念を背景に高騰。米原油先物相場は一時、約13年8カ月ぶりの高値となる1バレル=130ドル台に跳ね上がった。
 ロシアは米国とサウジアラビアに並ぶ産油国で、侵攻前は世界の石油消費量の5%に相当する日量約500万バレルを輸出していた。IEAは今月以降、ロシアからの原油・石油製品の輸出が日量300万バレル減ると予測。減少分をどう補うかがIEAやOPECの喫緊の課題だ。
 だが、産油国と消費国の利害調整は一段と難しくなっている。昨年来、ロシアも参加するOPECプラスは大幅増産すれば原油相場が下がり、収入の減少につながるため後ろ向きだ。IEAは「サウジとアラブ首長国連邦(UAE)だけがロシア産原油の不足をすぐに相殺できる増産能力を持つ」と分析するが、両国はOPECプラスの結束を優先している。
 ロシア産原油の減少分は日米欧の消費国が協調して石油備蓄を放出しても補えず、産油国と消費国の対立が長引けば原油相場に上昇圧力がかかり続ける恐れもある。ガソリン高などによるインフレが米国の企業や家計を直撃する中、11月に中間選挙を控えるバイデン氏は時間との闘いを迫られている。

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