「成長」実現に不透明感 歳出拡大、好循環につながらず―来年度予算案

東京, 12月25日, /AJMEDIA/

 政府が閣議決定した2023年度予算案は一般会計総額が114兆3812億円と過去最大を更新した。歳出拡大の主な要因は防衛費の大幅な増額で、岸田文雄政権が実現を目指す「成長」と「分配」の好循環への効果は限定的だ。政府は23年度の実質GDP(国内総生産)成長率を1.5%と試算するが、実現は賃上げや物価動向次第の面がある。
 23年度予算案で期待される成長のけん引役は、脱炭素社会の実現に向けて社会変革を図る「グリーントランスフォーメーション(GX)」の推進。政府は新たな国債「GX経済移行債」(仮称)について、当初段階で5061億円を発行。23年度の合計発行額は約1兆6000億円となる見通しだ。調達した資金で民間の脱炭素投資を後押しする。
 経済産業省は約4900億円のGX支援対策費を計上。水素による製鉄手法の実証事業や廃炉が決まった原発を建て替えるため、次世代革新炉の開発を促進する。だが、いずれも商用化は30年代以降とみられ、GX移行債を呼び水に、今後10年間で150兆円超という巨額の投資を官民で継続していくには課題も多い。
 次世代革新炉を巡っては、立地先での理解を得られるかに加え、世界で開発競争が進む中で莫大(ばくだい)なコストに見合った収益を生み出すことも求められている。
 生産性向上に向けた中小企業の研究開発支援や自治体のデジタル化支援も単なる救済やバラマキに陥らないよう費用対効果が問われる。
 分配政策の目玉は、来年4月の出産育児一時金の42万円から50万円への引き上げだ。財源の一部は、24年度から後期高齢者が負担する仕組みを導入する。
 税制面では、年間の金融資産と給与所得の合計で30億円を超える富裕層への課税を強化するが、対象はわずか200~300人。税負担の公平性確保には明らかに迫力不足だ。
 少額投資非課税制度(NISA)の恒久化と非課税期間の無期限化も決まった。政府はとりわけ若年層が長期にわたって資産形成できる環境整備を目指している。しかし、物価高が生活を圧迫し続ける中、「貯蓄から投資」の流れが定着するには、結局企業による継続的な賃上げが不可欠だ。

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