配慮義務に「抜け道」懸念 実効性向上へ運用・見直し課題―救済新法

東京, 12月11日, /AJMEDIA/

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を受けた被害者救済新法が10日、成立した。問題解決に向けた一歩と期待されるが、禁止行為の要件は厳しく、配慮義務にとどめた規定が「抜け道」となる懸念は拭えない。実効性をどう高めていくのか。実際の運用状況の検証や、さらなる規制強化の検討が課題となりそうだ。
 7月の安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、教団信者が多額の寄付を行い、家族が困窮している問題が改めて浮き彫りとなった。献金の法的規制がないため、元信者や家族らが法整備を切望。政府・与党は、新法に野党の意見も反映させ、審議入りから5日間で成立にこぎ着けた。
 岸田文雄首相は10日の参院消費者問題特別委員会で、今後の政府対応について「法解釈の明確化など実効性の向上、適切な運用が図られるよう、さまざまな支援への取り組みを続けていく」と強調した。
 新法は、被害の未然防止と救済の2本柱だ。
 未然防止では、寄付勧誘に際し「霊感で不安をあおり、寄付が必要不可欠と告げ、困惑させる行為」などを禁じた。その上で、事後の取り消しを可能にし、刑事罰も設けた。しかし、「必要不可欠」や「困惑」など要件は厳格。全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士は、国会の参考人質疑で「ほとんど役立たない」と断じた。
 野党はマインドコントロール下の寄付禁止を求めたが、政府・与党は「内心」の問題に関わるため困難と主張。「個人の自由意思を抑圧しない」などの配慮義務にとどめた。法人側がこれを順守しない場合は勧告・公表できる。阿部弁護士は「被害救済に結び付き得る」と評価しつつも、要件が厳しく、実際の運用に関しては「かなりハードルが高い」とみる。
 救済では、元2世信者ら家族への対応が論点となった。子や配偶者が生活費などを法人側に請求できる仕組みを整えたが、被害者本人に資力がないことが前提。被害額を全額請求できるわけでもない。
 元2世信者の小川さゆりさん(仮名)は、国会の参考人質疑で「最大の積み残し課題は、子どもの被害が現実的には全く救済できないことだ。来年の国会で、宗教的な児童虐待を防止する法案の成立をお願いしたい」と訴えた。

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