宇宙ベンチャー、「脱ロシア」模索 国内ロケット確保急務に

東京, 6月19日, /AJMEDIA/

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、人工衛星の開発や運用を手掛ける国内のベンチャー企業が戦略の見直しを迫られている。打ち上げ実績が豊富なロシアのロケット「ソユーズ」が事実上利用できなくなったため。宇宙ベンチャーによる「脱ロシア」の模索が始まった。
 商業用の小型衛星は防災や農業などで宇宙空間からのデータ活用が広がり、世界的に打ち上げ数が増加。経済産業省の予測では、2020年からの5年間で打ち上げ数は最大2400機に上る。日本政府も多数の小型衛星を連携させて情報収集する「小型衛星コンステレーション(衛星網)」の構築を掲げる。
 これに併せ、衛星運搬を担うロケットの需要も高まる。だが、昨年の世界のロケット打ち上げ成功数136回のうち、22回の実績を持つソユーズは制裁の応酬により利用が難しくなった。キヤノン電子やIHIエアロスペースなどが設立した小型ロケット打ち上げ事業者のスペースワン(東京)は「ロケットが不足する可能性がある」と指摘する。
 影響は国内のベンチャー企業に及ぶ。小型衛星網構築を進めるアクセルスペースホールディングス(同)は、今年の4機同時の打ち上げ計画を来年に延期。「信頼度が高い」とソユーズを過去6回利用したが、別のロケット利用を検討する。悪天候でも地球観測が可能な小型の合成開口レーダー(SAR)衛星を開発するシンスペクティブ(東京)も急きょ、今夏の打ち上げで予定したソユーズの活用を断念。米社に委託し、秋の打ち上げを目指す。
 国内でもロケット開発は進むが、日本の商業衛星の国内打ち上げ実績は昨年までの3年間で0件。旺盛な需要に応えるため、低価格な国内ロケットの確保が急務とされる。
 スペースワンは現状を「追い風」と捉え、年内の初号機打ち上げを目指し開発を急ぐ。インターステラテクノロジズ(北海道大樹町)も来年、衛星運搬用ロケットの打ち上げを計画。同社の稲川貴大社長は「1桁安い価格帯」を目指し、「早期の打ち上げでしっかり需要を取っていきたい」と強調する。
 ロケット開発とともに、打ち上げ場の整備も国内各地で進み、宇宙輸送の低価格化や手続きの簡略化に期待が高まる。スペースワンが打ち上げを計画する和歌山県串本町や、インターステラが拠点とする大樹町のほか、大分空港(大分県国東市)でも年内の打ち上げが予定されている。

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