地雷だらけの町に最新鋭の空港 隣国が脅威を感じる「財力の挑発」Part-2

東京, 2月13日, /AJMEDIA/

地雷の心配から、フュズリへの帰還はまだ実現していない。 現在の人口はゼロ。 人通りのない廃虚の 風景とは、しかし不釣り合いに豪華な施設が最近できた。 フェズリ国際空港だ。
アグダムの説明役だった統治スタッフのアラズ・イマノフさん (39) が、この日も案内をしてくれた。
原野にそびえる空港ビルは、小ぶりではあるものの、水平に広がる豪華な現代建築だ。 場末感をみじ んも感じさせないぴかぴかの状態。 アゼルバイジャンとトルコの企業の合弁事業で、約8カ月間の工事の 末、2021年10月に開港した。 式典にはアリエフ大統領のほか、トルコのエルドアン大統領も出席した。

長さ3千メートルあまり、幅約60メートルの滑走路を持ち、8機まで駐機できる。 内部には、カフェと免税 店。 「国際空港に必要なすべての設備を備えています。 乗客は1時間に200人をさばけます」。 国際航空 運送協会(JATA)のアルファベット3文字のコード 「FZL」も獲得した。
訪れた日はフライトがなく、 空港内はがらんとしている。

「トルコなどから国際便も飛んでいます。 シュシャで会議が開かれる時には、欧州から参加者がここま で空路で来ることもあります」と、 イマノフさんが説明する。

欧州やトルコ、ロシアなどの航空会社と契約はすでに進んでいるという。ただ、定期便はない。 「まだ無理ですね。 もし大勢の旅行者が来て周囲を歩き回るようになると、〈地雷の危険がありますから〉
人のいない街に、最新鋭の空港が開港する。 ちぐはぐな感じもするが、 アゼルバイジャンがそれほど、 復興を誇示したいということなのだろう。 空港と廃虚はいずれも、この国が国外に向けてアピールしたい 正と負の姿なのだ。

スマートな若い官僚 産油国マネーで大事業

2年前に奪還した地域に、アゼルバイジャンは三つの空港を開く計画を立てている。 このフュズリ空港は観光開発の拠点として期待し、 南部ザンゲズル地域にすでに完成したザンギラン空港は物流拠点を想定する。もう一つはアルメニアに近い山あいのラチン空港で、 小規模ながら山岳ツーリズムに役立るという。

後日、首都パクーでこの地域の大統領特別副代表バシル・ハジェフさん(43)に話を聞いた。

復興計画は、 奪還地域の北部に当たるカラバフ地域 南部に当たるザンゲズル地域、シュシャ市の3 カ所に区分され、それぞれに復興を指揮する大統領特別代表が置かれている。 日本の知事に近い存在 だ。 その統括の下に「地雷除去」「経済」など11の担当部局が置かれ、 行政機構を構成しているという。

「国内避難民となっていた住民に戻ってきてもらうべく、インフラを整備すると同時に、持続的な経済と雇用を確保することです。 ただ、 建設する前に地雷除去が必要ですから、ゼロからというよりマイナスからの出発です」

事業を進めるうえでは、 外国企業にも大いに期待している。 すでにスロバキアやイスラエル、アラブ首 長国連邦などの企業が参入しているという。

「アゼルバイジャンにとってあまり得意でない分野での協力を歓迎します。 例えば、 トンネル掘削はトル コの企業に担ってもらっていますし、グリーンエネルギーに関しては日本のTEPSCO (東電設計) にお願 いしています」

これまでの2年間の予算規模は、 奪還地域全体で50億マナト (約4千億円)に達するという。 産油国でな かったら難しかっただろう。 これを逆に、 発展の新たな起爆剤にしようとする意欲も、アゼルバイジャンにはうかがえる。

この大事業を支えているのは、この国で急速に台頭している若手テクノクラートだ。 アゼルバイジャン では近年、 ソ連時代からの政府幹部やロシアで学んだ世代が背景に退き、 欧米に留学して技能と国際 感覚を身につけた官僚が前面に出てきたといわれる。 スマートで弁が立ち、 英語を流暢 (りゅうちょう)に 話す一群だ。 筆者が今回会った人の多くも、イマノフさんやハジェフさんら、 30代から40代前半の若手 だ。

こうした傾向は、 国外のビジネス関係者からも好感をもって受け止められているという。

背景には、 天然ガスや石油の資源が生み出す豊かさがある。 豊富な資金を注ぎ込んで、軍と政府の 近代化を進めたのが、この30年のアゼルバイジャンだったといえる。

それがアルメニアには脅威となる。 第2次紛争以後も両国は衝突を繰り返しているが、アルメニア側は これを、財力と軍事力を背景にしたアゼルバイジャン側の挑発と受け止めている。 アルメニアのバルザン・ネルセシアン駐英大使は「彼らは攻撃を周到に準備し、 トルコとの共同で実行している。 アルメニア は比較的小さい国であり、武器供給も軍事予算も十分でないなか、 我が軍は英雄的な戦いによって、国 境と領土の一体性を守っている」と話す。

今回の取材は、 アゼルバイジャン政府に出した要請が認められて実現した。 ナゴルノカラバフとその周辺の奪還地域での取材は、フランスのラジオ記者とともに行動するツアーで、行程の大部分に政府関係者が同行した。 明確な取材規制はなかったが、時間の制約もあり、 取材対象

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts