原子力」活用、岸田首相言及 ロシア石炭禁輸で電力に懸念

東京, 4月12日, /AJMEDIA

 ウクライナ危機でエネルギー価格が高騰していることを受け、岸田文雄首相が原子力発電の活用に言及し始めた。対ロシア制裁で石炭の段階的輸入禁止に踏み切ったことで、電力供給が綱渡りになるとの懸念が拡大したことが背景にある。原発に対する世論の根強い不信感を念頭に、安定的なエネルギー源として活用が可能か見極めたいとの思惑もありそうだ。
 首相はロシア産石炭の禁輸を打ち出した8日の記者会見で「再生可能エネルギー、原子力など脱炭素の効果の高い電源の最大限の活用を図っていく」と表明。3月31日の衆院本会議でも「原子力は脱炭素の『ベースロード(基幹)』電源で、安定供給確保の観点から重要だ」と指摘していた。
 日本は石炭輸入の11%をロシア産に頼る。石炭価格は高騰しており、輸入削減が電気料金値上げなどの形で国民生活に跳ね返るのは避けられそうにない。
 一方、再エネの急拡大は設備やコストの面で容易でなく、天候にも左右される。首相に近い政府関係者は代替エネルギーについて「原発しかない。このままだと12月以降は大停電が起こるかもしれない」と危機感を募らせる。
 実際、政府は今年3月、東京電力や東北電力管内で電力が不足し、停電の恐れがあるとして、初の電力需給逼迫(ひっぱく)警報を発令。福島県沖地震による火力発電所の停止など特殊要因もあったものの、供給の不安を印象付けたばかりだ。
 政府は昨年10月に策定したエネルギー基本計画で、2030年度の電源構成に占める原発の比率目標を20~22%と設定したが、20年度の実績は3.9%。11年の東日本大震災後に再稼働したのは、廃炉が決まった原子炉を除く全36基中10基で、現在稼働しているのは関西電力大飯原発3号機(福井県おおい町)など5基にとどまる。
 こうした実情を踏まえ、自民党は11日にまとめた緊急経済対策の提言案に「電力の安定供給の確保に向けて、原子力を含め、あらゆる電源の最大限の活用を進める」と明記した。
 再稼働について、松野博一官房長官は同日の記者会見で「原子力規制委員会の新規制基準に適合すると認めた場合に進めるという政府の方針に変わりない」と従来の見解を繰り返した。だが、規制委の審査に対しては、自民党内から「先延ばしを繰り返し、責任逃れをしている」(関係者)との不満も漏れる。
 政府・自民党の姿勢に、野党からは批判の声が上がる。立憲民主党の馬淵澄夫国対委員長は「緊急避難的に物事を進めようという発想があるなら大きな間違いだ」と記者団に指摘。れいわ新選組の山本太郎代表は「ウクライナに絡ませるのは火事場泥棒だ」とけん制した。

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