健康や医療、環境に商機 三枝ヨーカ堂会長インタビュー―日中国交正常化50周年

東京, 9月28日, /AJMEDIA/

 日中国交正常化から50年となる29日を前に、スーパー大手イトーヨーカ堂の三枝富博会長(72)がインタビューに応じた。三枝氏は中国に約20年駐在した経験を踏まえ、日系企業は健康、医療、環境分野で商機があると指摘。今後も中国は重要な市場だと強調した。
 ―ヨーカ堂が進出した1997年に赴任した。
 78年に始まった「改革開放」の流れの中、中国は流通の近代化が政治的な最重要課題だった。当社は進んだノウハウを持っており、大衆が豊かになるお店づくりに役立つと白羽の矢が立った。
 そのころの中国は、日本国内の小売業から「暗黒大陸」と見られていた。配給制度の名残があり、サービスという概念はなかった。しかし、むしろ可能性を感じた。安全・安心な商品や鮮度の高い食品を提供したかった。
 ―実際は。
 オープンまで8カ月ほどしかなく、現地の市場動向や取引先も分からなかった。住居関連品の担当だった私は、商品の8~9割を日本から輸入して置いたが、お客さまが来たのは最初の3日間だけ。私たちの考える良いモノと、地域が求める良いモノが異なっていた。
 地元の中国人社員と多くのお客さまの自宅に行き、家の中を見せてもらって自らの目でニーズを確認した。その後も誠実な商売で信頼を築き、市民から認めてもらった。
 ―小売業では当時、中国進出が相次いでいた。
 ヤオハングループが絶好調で、政府と良い関係をつくっていた。多くの外国企業もそういう方法でやっていた。だが、そのマーケットの中でお客さまから支持をいただくことは本当に難しいことだった。
 ―2005年や12年の反日デモでは事業継続が危ぶまれた。
 単純に現象面だけ見れば暴挙だが、歴史も合わせて見なければならない。反日デモは愛国運動と理解し、まずお客さま、次に社員を守る。店は燃えても建て替えれば良い。そのように考えたら怖くなくなった。
 ―日本企業の中国進出の現状をどう見るか。
 外資に求められるものが昔と変わった。今は「共同富裕」政策に象徴されるように格差の問題も生じている。日本企業は健康や医療、環境で特色が出せる。サービスの質も中国より10~15年先を行っている。貢献できる部分はある。
 ―中国は引き続き重要市場の一つか。
 隣に15億人近いマーケットがあって無縁でいられるわけがない。経済でどのように良い関係をつくっていくかは重要だ。現地を訪れた欧州各国の首脳は、中国に対して「経済は経済、政治は政治」と価値観を分けて考えていた。日本も大人の付き合いを模索しても良いのではないか。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts