ミサイル対応、迎撃から反撃へ 中朝の軍事強化に対抗―安保3文書改定

東京, 12月18日, /AJMEDIA/

 政府が16日に閣議決定した安全保障関連3文書は、敵のミサイル発射拠点などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)保有を明記した。覇権主義的な動きを強める中国や、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮など、厳しさを増す日本周辺の安保環境を踏まえた対応だ。日本のミサイル防衛は今後、弾道ミサイル防衛(MD)による「迎撃」から、長射程ミサイルによる「反撃」に、軸足を移すことになる。
 ◇日米連携、一段と
 反撃能力を巡り、政府は長らく「憲法解釈上は自衛の範囲に含まれる」としつつ、政策判断で保有してこなかった。
 しかし、日本の周辺国を見渡すと、ミサイル能力の向上は著しい。中国は2025年までに大陸間弾道ミサイル(ICBM)など2000発を保有する見通し。北朝鮮も迎撃困難な変則軌道の弾道ミサイルを開発し、発射方式も移動式発射台(TEL)や潜水艦など多様化させている。
 こうした現状認識を踏まえ、3文書は「既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつある」と指摘。従来のイージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)による二段構えの迎撃態勢に加え、「有効な反撃を加える能力を持つことで、武力攻撃そのものを抑止する」と明記した。
 政府は26年度以降、長射程化した国産の「12式地対艦誘導弾」を順次配備。また、早急に十分な数のミサイルを確保する観点から、湾岸戦争などで実績がある米国製巡航ミサイル「トマホーク」も26、27年度に導入する。
 政府関係者は「日本にミサイルを撃てば撃ち返されると思わせることが抑止力になる」と狙いを説明。ただ、反撃には対象位置の正確な把握が必要で、人工衛星網の整備などが欠かせない。日本単独では困難なため、同盟国である米国との安保連携が一段と進みそうだ。
 ◇「脅威」色濃く
 日本の周辺国に対する「脅威」の認識は、3文書にも色濃く反映された。
 中国は、これまで「国際社会の懸念事項」との表現にとどまっていたが、今回は「最大の戦略的な挑戦」と踏み込んだ。北朝鮮も「国際社会の深刻な課題」から「一層重大かつ差し迫った脅威」に改めた。
 記述を一変させたのがロシアだ。「あらゆる分野で協力」と前向きに位置付けていたが、ウクライナ侵攻を受けて「安保上の強い懸念」と厳しく指摘した。
 ◇新領域、装備輸出も
 安保分野を巡っては近年、宇宙・サイバー・電磁波といった新領域での対応力構築が課題となっている。3文書では、サイバー攻撃を未然に防ぐため、先手を打って対抗措置を取る「能動的サイバー防御」導入を明記した。
 実施に当たっては、自衛隊が平時からネットワーク上の通信を監視しなければならず、憲法の保障する「通信の秘密」などとの関係で、これまでは不可能とされてきた。今後、自衛隊に権限を与えるための不正アクセス防止法や刑法の改正が必要となる。
 日本製の防衛装備品を海外に売り込む「装備移転三原則」についても、運用指針を緩和する方向で検討を進めることになった。これは、三原則の策定された14年以降、完成装備品の輸出がフィリピンへの警戒管制レーダーのみで、想定より進んでいない現状が背景にある。
 国内防衛産業の保護、育成もにらみ、政府・自民党は移転促進に積極的だが、公明党は慎重な立場を崩していない。対象国の範囲や装備品の種類をどう判断するかが課題となりそうだ。
 ◇「対外公約」
 国内総生産(GDP)比でほぼ1%の枠内に収められてきた防衛費は、今後5年間で約1・5倍に膨らむことになる。
 そもそも、岸田文雄首相は5月のバイデン米大統領との会談で「防衛力を抜本的に強化し、防衛費の相当な増額を確保する」と表明。反撃能力の保有についても「選択肢を排除しない」としていた。
 今回の結論は、半年以上前から事実上の「対外公約」だったと言える。

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