「空中の白鯨」 に残る戦闘の爪痕 数千人犠牲になった紛争の最深部 Part-2

東京, 2月5日, /AJMEDIA/

山あいの温泉郷のような風情

海面下28メートルのカスピ海に面する首都バクーから車で5時間ほど西に走ると、 山岳部のふもと、ナ ゴルノカラバフへの南東側の入り口にあたる標高約400メートルのフュズリに到着する。 そこから、 頂上 にあたるシュシャまでの60キロは、標高差1千メートル以上。 山道しかなかったその区間に、シュシャを 奪還したアゼルバイジャンは急ピッチで自動車道路を建設した。

シュシャを自らの文化と伝統のよりどころと見なすアゼルバイジャンは、その奪還を悲願と位置づけ、 四半世紀余りを経た2020年に大規模な軍事攻勢をかけた。 44日間の激戦と数千人ともいわれる犠牲者 を出したこの「第2次ナゴルノ・カラバフ紛争」ではアゼルバイジャンが優勢に戦いを進めた。 同年11月に は、アルメニアがナゴルノカラバフ地域の一部を残して、90年代から支配してきた周辺地域をアゼルバ イジャンに引き渡すとする停戦合意が発効した。 この停戦合意の直前にアゼルバイジャンはシュシャを 制圧した。

この停戦合意の直前にシュシャを制圧したアゼルバイジャンは、 この街の再建と修復を大々的に進め ている。 昨年11月、現地を訪ねた。

山あいの温泉郷のような風情

海面下28メートルのカスピ海に面する首都バクーから車で5時間ほど西に走ると、 山岳部のふもと、ナ ゴルノカラバフへの南東側の入り口にあたる標高約400メートルのフュズリに到着する。 そこから、 頂上 にあたるシュシャまでの60キロは、標高差1千メートル以上。 山道しかなかったその区間に、シュシャを 奪還したアゼルバイジャンは急ピッチで自動車道路を建設した。
シュシャ攻略戦で部隊が進撃した道筋と重なることにちなんでだろう。 「戦勝街道」と名付けられたその 道路は完全舗装の全線2車線で、 フェズリ・シュシャ間を1時間あまりのドライブで結ぶ。 その間、いくつも この山を越え、谷を下る。 急坂と急カーブの連続。 私が乗った車は夕方にフュズリを出て、アクロバットの ような運転手のハンドルさばきで、山道を急いだ。

アゼルバイジャンはこの道路に満足せず、シュシャ行き高速道路も建設中だ。 時折、 トンネルの掘削 現場が眼下に見える。

夕闇が深まるころ、 つづら折りの道路の頭上に、 一列に連なる光が見えてきた。 シュシャ市内に向かう道路の街灯だった。

山の頂上部分を切り開いたシュシャは、 坂道だらけの街だ。 すでに日が暮れた街路を上り下りしつつ、 ホテルに向かう。 ここで2021年に開業した「ハリブルブル・ホテル」 は、 最高級の五つ星。 アゼルバイジャ ン各地から集まった退役軍人の団体客がロビーを占領している。

その隣では、こうこうとあかりに照らされて、 夜間工事の最中。 別の大規模ホテルの建設現場だという アゼルバイジャン政府はこの街を、 「街全体が博物館」との触れ込みで、 国際的な観光都市として売 り出そうとしている。

続きがある

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