NATO、インド太平洋に接近 中国への警戒強める―ウクライナ侵攻1年

東京, 2月22日, /AJMEDIA/

ロシアのウクライナ侵攻を契機に、北大西洋条約機構(NATO)が日本を含むインド太平洋地域に接近し、連携を強化している。武力による隣国侵攻と占領地の一方的併合という現実を前に、「台湾有事」への懸念が拡大。安全保障面で欧米とアジアを切り離すことができないとの認識を背景に、中国の覇権主義的な動きに警戒を強めている。
 「もしプーチン(ロシア)大統領が勝利すれば、中国の思惑や決断に影響を及ぼすだろう」。NATOのストルテンベルグ事務総長は17日、ドイツのミュンヘンで、欧州の安保問題がアジアへ波及すると危機感を示し、ウクライナ支援の重要性に改めて言及した。
 NATOは侵攻後の昨年6月、行動指針となる「戦略概念」を改定し、中国に初めて言及。「われわれの利益、安全保障、価値観への挑戦だ」と明記した。同年11月には軍事部門でも使われるレアアース(希土類)調達などを念頭に、中国依存を認識し、リスク管理を行うべきだという見解で一致した。
 NATOにとってロシアは「仮想敵」だったソ連の後継国家で、冷戦後にパートナー関係を模索したものの、現在は「最も重大かつ直接の脅威」となった。欧州のロシア産天然ガス依存がエネルギー危機を引き起こしたことを教訓に、中国に対し「同じ過ちを繰り返さない」(ストルテンベルグ氏)との考えがある。
 並行してNATOは、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国との関係を強化している。昨年は4月の外相理事会と6月の首脳会議に4カ国を招待。先月末には、ストルテンベルグ氏が日韓を訪問した。日本との共同声明では、ロシアと中国の「増大する軍事連携」に懸念を示すとともに、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調した。
 NATOはリトアニアで今夏開催する首脳会議にも4カ国を招待する意向で、「今後の方向性を示す機会だ」(関係者)と期待を寄せる。米ジョージタウン大のサラ・モラー准教授は、米シンクタンクへの寄稿で「(昨年の招待が)一度限りではなく、近くNATOの新常態になる可能性を示唆している」と指摘。侵攻が続く中での日韓訪問自体に大きな意味があり、インド太平洋を巡るNATOの戦略は「新たな段階に入りつつある」と記した。

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