東京, 11月05日, /AJMEDIA/
神戸市北区で2017年7月、祖父母ら5人を殺傷したとして、殺人罪などに問われた無職の男性被告(30)の裁判員裁判の判決が4日、神戸地裁であった。飯島健太郎裁判長は「正常な精神作用が機能しておらず、妄想などの圧倒的影響下にあった疑いを払拭(ふっしょく)できない」と指摘し、心神喪失状態だった疑いが残ると判断して刑事責任能力を認めず、無罪(求刑無期懲役)を言い渡した。
事実関係に争いはなく、争点は被告の刑事責任能力の程度だった。起訴前に精神鑑定した2人の医師の意見は割れており、飯島裁判長は妄想型統合失調症と診断した1人目の鑑定結果を採用。殺害した相手を、人ではない「哲学的ゾンビ」だと思っていたとの妄想について、「信じ切っていたか、そうでないとしても疑念はごく小さく、思いとどまることはできなかった」と判断した。
検察側は「精神障害の影響は圧倒的とは言えない」とする2人目の医師の鑑定結果を基に、心神耗弱を主張していたが、飯島裁判長は、同医師と被告との面接が1回のみで、5分程度だったことなどから、「鑑定手法は不十分で、(1人目に)比肩するだけの信用性を認めることはできない」と退けた。
被告は17年7月16日朝、神戸市北区の自宅やその周辺で、祖父=当時(83)=と祖母=同(83)=、近所の女性=同(79)=を包丁で刺すなどして殺害。母親(57)ら2人も殺害しようとしたとして起訴された。
神戸地検の山下裕之次席検事の話 判決内容をよく検討し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい。