防衛費増額「財源の壁」 国防強化、動きだす増税論

東京, 9月22日, /AJMEDIA/

 来年度予算編成の最大の焦点である防衛費増額の財源確保に向け、増税をめぐる議論が動きだした。与党関係者が9月半ばまでに、経済界に対して法人税、金融所得課税、たばこ税の引き上げを検討する意向を伝えた。不透明な経済情勢下で税負担の増加への警戒感も強く、実現には高い壁がある。
 防衛費増額については、自民党内に北大西洋条約機構(NATO)基準を念頭に、5年以内に国内総生産(GDP)比2%以上に当たる11兆円規模を求める声が強い。現行の防衛予算は5兆円台で、政府が検討している海上保安庁予算などの経費を幅広く含めるNATO基準での算定でも6兆円台と、大幅な増額とその財源が必要だ。
 財源の候補で軸となるのは法人税。所得税、消費税と並ぶ「基幹税」で税収も多い。安倍政権時代に賃上げや成長投資を支援する目的で、国と地方を合わせた実効税率を37%から現在の29.74%に引き下げてきた経緯がある。政府・与党内には「意図した成果を挙げてこなかった」との指摘もあるが、一転して増税となれば、企業の反発は強そうだ。
 金融所得課税をめぐっては、もともと年間所得額1億円を境に非上場株式などの譲渡所得が多い人の税負担が減少する「1億円の壁」の問題がある。増税には富裕層優遇の是正という狙いもありそうだ。
 たばこ税に関しては健康増進のために毎年のように増税が要望されている。海外で国防費確保の観点から税率を引き上げる動きもあり、財源案として浮上している。
 物価高の中での所得税や消費税の増税による財源捻出は、家計を直撃するだけに一段とハードルが高い。公明党の山口那津男代表は20日の記者会見で「新たな国民負担をいたずらに招かないよう検討していく基本姿勢が重要」とくぎを刺した。
 ただ、財源をめぐっては自民の積極財政派を中心に全額を国債で賄う案もあり、木原誠二官房副長官も「国債が駄目だという立場を私自身は取らない」と強調している。財源確保の在り方は最終盤までもつれそうだ。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts