長尺トイレ紙、販売も伸びる 5年で3倍、買い物の悩み解消

東京, 1月22日, /AJMEDIA/

 かさばるトイレットペーパーを頻繁に買ってくるのは面倒―。そんな悩みに応える長尺タイプが売れ行きを伸ばしている。肌触りの柔らかさを保ったまま紙をしっかり巻く技術で、ロールの直径はさほど変わらずに長さは従来品の2~3倍を実現。買い物や交換の手間を減らせる上、収納に場所を取らずに済むと人気を集め、売り上げ規模は5年で3倍近くに膨らんだ。
 「スコッティ」ブランドの日本製紙クレシア(東京)は2021年春、従来品の生産をやめ、長尺タイプに特化する決断を下した。品ぞろえはシングルが1.5倍と2倍、ダブルは1.5倍から3倍まで。輸送トラックに積み込める量が実質的に増えるため、二酸化炭素の排出量削減にもつながる。
 調査会社インテージ(同)によると、長尺タイプの市場規模は22年に524億円へ拡大。トイレットペーパー全体の27.1%を占める。販売額は17年の178億円から2.9倍に増え、シェアも10.5%から2.6倍に伸びた。
 同社アナリストの木地利光氏は、急成長した背景を「メーカーや流通業者は搬送、保管のコストが抑えられるものを扱いたいからだ」と分析。消費者にとっても、持ち運びや収納の点で「便利な商品だ」と指摘する。
 成長市場を巡る大手メーカーの戦略は各社各様だ。家庭用の紙製品シェアで首位の大王製紙は「消費者がトイレ紙に一番求めるのは柔らかさ」とみて、肌触りを重視する。「3.2倍巻」製品を展開する一方、「エリエール」ブランドの高品質をうたった従来品も販売を継続。ニーズを見極めながら商品戦略を練る方針だ。
 王子ネピア(同)は、長尺品の売上比率がトイレ紙の約4割を占める。新タイプの販売拡大に軸足を置きつつ、競合他社と差別化するために原料を厳選した高価格帯の商品で活路を見いだす。
 長尺品の開発競争は、大手メーカー同士の法廷闘争にも発展した。日本製紙クレシアは、従来の3倍の長さがあるトイレ紙の特許権を大王製紙が侵害しているとして東京地裁に提訴。大王側は争う姿勢を示している。

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