追悼「一区切り」、風化に懸念 国会議論は低調、政府の姿勢変化も―東日本大震災11年

東京, 3月6日, /AJMEDIA/

 東日本大震災から11年目を迎える今年から、政府主催の追悼式は開かれない。東京電力福島第1原発の廃炉をはじめ被災地の課題はなお山積しているが、全国に拡大した新型コロナウイルス感染への対応などが国政の中心課題となり、国会での議論も活発とは言えないのが実情。政府の姿勢に変化の兆しもあり、風化を懸念する声が漏れている。
 2月2日の衆院予算委員会。岩手県選出の階猛氏(立憲民主党)は「インフラ整備は進んだが、人がいなくなれば宝の持ち腐れだ」と指摘。岸田文雄首相が掲げる「人への投資」に触れ、「被災地で活躍するための人への投資が重要だ」と訴えた。
 首相も2月7日の同委で「復興・再生に向けた取り組みをあらゆる知恵と力を結集し実行する」と力を込めたが、2022年度予算案の審議で大震災関連のやりとりはわずか。新型コロナやウクライナ情勢に多くの時間が割かれているのが現状で、自民党の復興相経験者は「どんどん風化が進んでみんな意識がない」と語る。
 こうした懸念を払拭(ふっしょく)するように、政府が今後の福島県の復興・再生を見据えて具体化を急ぐのが、「創造的復興の中核拠点」と位置付ける国際教育研究拠点の整備だ。設置に向け福島復興再生特別措置法改正案を今国会に提出。今年度内に基本構想を策定する方針で、首相は「国内外に誇れる研究内容」を目指すと強調する。
 首相は、14カ国・地域が続けている福島県産などを対象にした食品輸入規制の解除にも力を注ぐ。2月16日の日英電話首脳会談では、ジョンソン首相に直接撤廃を働き掛けた。
 一方、岸田政権に代わってから、政策としての優先順位が下がったと受け取られかねない動きも続いている。専任としてきた復興相に沖縄・北方担当を兼務させたのは一例。昨年10月の所信表明演説、1月の施政方針演説では章を立てて復興を取り上げなかった。官邸幹部は「復興軽視」との見方を否定するが、被災地には不安も広がる。
 首相は11~12日に岩手、宮城、福島3県を訪れ、11日は福島県主催の追悼式に出席する。政府追悼式の終了に伴い、発災当日の首相の被災地入りが実現したが、今後の姿勢が問われそうだ。

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