事故乗り越え、特産品育成の動き 営農再開、自治体で差―原発避難12市町村・福島

東京, 3月6日, /AJMEDIA/

東京電力福島第1原発事故から間もなく12年。避難指示により営農休止を余儀なくされた福島県12市町村では、再開が着実に進む。放射性物質検査など他の県にはないコスト要因があり、風評被害も根強い中、特定の農産物の育成に取り組む動きが出ている。
県によると、2011年12月末、12市町村では県内営農面積の約14%に相当する計1万7298ヘクタールで作付けを休止した。その後の除染や基盤整備により、22年3月には4割に当たる7370ヘクタールで再開。ただ、広野町(再開率77.7%)や楢葉町(同66.5%)など避難指示解除が比較的早かった自治体では進んでいるのに対し、原発が立地する大熊・双葉両町はほとんどできていない。
 風評被害防止に向けた取り組みは続く。除染後の農地は放射線量を計測し、実証栽培で収穫した作物も放射性物質検査にかけ、いずれも基準値未満となると出荷制限は解かれる。制限がなくなれば検査義務もなくなるが、「安全を最大限考慮するため、どこも出荷前には自主検査を継続している」(県担当者)という。
 近年では、楢葉町を中心にサツマイモ栽培が盛んになっている。17年にイモの生産・加工・販売を行う「白ハト食品工業」(大阪府)が参入し、町内の耕作放棄地で実証栽培が始まったことがきっかけ。地元農業組合によって生産部会も立ち上がり、同社の農園と合わせて約50ヘクタールで栽培されている。全量買い取りを担う同社現地法人の岡田知行取締役は「ゼロからの土作りは、資金と時間、手間がかかる。参入のハードルは高かったが、出荷先があることで農家も安心できると思う」と話す。育苗にも取り組み、23年度からは周辺自治体に配る予定だ。
 昨年8月にようやく全町避難が解消した双葉町は、町外から水を引く基幹水路が復旧していない。そのため、水稲の実証栽培などができない状態で、営農再開には時間がかかる見込みだ。
 大熊町は、19年に避難指示が解除された大川原地区で、営農に取り組む法人が増加している。町担当者は「復興関連工事の減少を見据えて挑戦する建設会社などもある。今後も除染が終わった農地は出てくるので地権者とのマッチングを支援する」と話す。
 被害が大きかった浜通りはこれまで稲作が主だったが、県担当者は「米価が下落する中、畑作への転換も進める必要がある」と指摘し、推奨品目にタマネギを挙げる。機械化でき、放射性物質の吸収率が低いのが利点という。既に浪江町では、県のオリジナル品種「浜の輝」の生産農家が増えている。県は補助金などを投入し、野菜の選別場や加工工場といった安定的な出荷先の確保を進めている。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts