抑制策発動、年金生活に影響 財政安定化には寄与、見直し論も

東京, 1月22日, /AJMEDIA/

 2023年度の公的年金支給額は3年ぶりに増額となった。ただ「マクロ経済スライド」の発動により、年金の伸びは物価上昇に追いつかず、実質的に目減りに。物価高騰が続く中、年金に頼る高齢者の生活に大きな影響を与えそうだ。
 マクロ経済スライドは、将来世代が受け取る年金額が足りなくなる事態を防ぐため、現在の年金支給額を抑制する制度。物価や賃金が伸びないデフレ下では発動されないが、上昇局面では過去の繰り越し分も含め一気に適用する。今回はこの仕組みにより大幅な抑制となった。
 ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫上席研究員は今回の改定について「繰り越し分も解消されたことで、年金財政の健全化が進む」と分析。既に受給している68歳以上の人については、賃金上昇率より低い物価上昇率を基準に算定するルールを適用したことも、将来の給付水準の維持に寄与する見通しだ。
 一方、中嶋氏は「実質的な目減りで高齢者世帯は生活が苦しくなる」と指摘。「世代間対立を招かないためにも、政府は(今回の抑制が)将来世代のために必要ということもしっかり説明すべきだ」と強調する。
 デフレ下で未調整分が持ち越され、物価高の局面で一気に適用する仕組みに対しては、年金財政や高齢者への生活に影響が大きいとして、経済界などから見直しを求める声が強い。25年の次期年金制度改革に向けて、こうした仕組みの在り方が議論される可能性もありそうだ。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts