岸田首相、韓国取り込み「成果」アピール 対中念頭、徴用工は進展なし―保守派反発も

東京, 11月15日, /AJMEDIA/

岸田文雄首相は韓国の尹錫悦大統領と初の対面形式による会談を行い、対中国で連携する方針を確認した。日米韓首脳会談では、北朝鮮、ロシアを含む3カ国を強くけん制する共同声明を発表。東アジアの安全保障環境が厳しさを増す中、韓国の取り込みに一定の成果を挙げた形だ。ただ、懸案の元徴用工問題に進展が見られない中での日韓会談開催に、保守派が反発する可能性もある。
 「尹大統領と『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』実現に向けて連携を確認した」。首相は13日夜(日本時間同)、カンボジアのプノンペンで行った日韓首脳会談後、記者団に「成果」を強調した。
 日本が提唱し米国も賛同するFOIPは東・南シナ海や太平洋などで覇権主義的な動きを強める中国が念頭にある。韓国は北朝鮮を挟んで中国と地続きという地理的条件もあり、最近まで自国の戦略として取り入れることにちゅうちょしていた。
 尹氏は11日になって「自由・平和・繁栄」がキーワードの韓国版インド太平洋戦略を発表。日本外務省幹部は「対中国で同じ方向を向く国が増えるのは良いこと」と歓迎した。
 米国のバイデン大統領を交えた日米韓会談後には、「FOIPの追求」を明記したプノンペン声明を発表。北朝鮮が核実験に踏み切れば「力強い確固たる対応」で対処すると警告し、ロシアが核使用をちらつかせていることには「使用は人類への敵対行為」と足並みをそろえた。日本政府高官は「事務方が踏み込んだ協議でまとめた」と明かす。
 一方、元徴用工問題は平行線をたどった。「外交当局間の協議加速を踏まえ、懸案の早期解決を図る」ことで一致したが、9月に米ニューヨークで行った「懇談」と同じ内容。今月2日に自民党の麻生太郎副総裁が尹氏と面会し、「首脳会談の前さばき」(麻生氏)をしたが、解決の糸口は今回も見えなかった。
 元徴用工問題の解決を脇に置く形での正式会談に、自民党保守派の懸念は根強い。それでも首相が踏み切ったのは、失態が続く内政で内閣支持率が「危険水域」に低迷しているためで、反転攻勢のきっかけを外交に求めた印象は否めない。
 中国の李克強首相も出席した東アジアサミットでは、「東シナ海で中国による日本の主権を侵害する活動が継続、強化されている」と名指しで批判。「主張すべきは主張する」(岸田氏)と強気な姿勢を示した。
 ただ、自民党保守派の中堅は「会ったからいいというものではない。評価できない」と不満を漏らす。立憲民主党の安住淳国対委員長は記者団に、徴用工問題について「わが国は『解決済み』と言ってきた。スタンスを変えたのか首相に確認しないといけない」と、帰国後の衆参予算委員会で追及する考えを示した。

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