岸田首相、沖縄復帰50年「寄り添い」強調 基地集中、抜本策なく―玉城氏、誠意ある取り組み訴え

東京, 5月16日, /AJMEDIA/

 沖縄の本土復帰50年の節目を迎えた15日、就任後初めて沖縄を訪れた岸田文雄首相は、記念式典で米軍基地負担軽減に取り組むと表明し、沖縄に寄り添う姿勢を強調した。しかし、在日米軍の専用施設・区域が沖縄に集中する状況は半世紀を経ても続く。沖縄が返還当時に求めた「基地のない平和の島」の実現は遠く、玉城デニー知事は政府に誠意ある取り組みを求めた。
 首相は式辞で基地問題について「大きな負担を担っていただいている。このことを重く受け止め、負担軽減に全力で取り組んでいく」と語った。近く日米で、米軍キャンプ瑞慶覧の「ロウワー・プラザ住宅地区」を返還に先立ち緑地公園化することで合意すると明かし、「目に見える成果を着実に積み上げる」とアピールした。
 首相は14日から2日間の日程で沖縄を訪問。式典出席以外に車座集会を2回行ったほか、焦点の米軍普天間飛行場なども視察した。ただ、玉城知事との本格的な会談はセットされず、県側と基地問題で突っ込んだやりとりをする場面はなかった。
 本土復帰前年の1971年、屋良朝苗・琉球政府行政主席は政府への建議書で、多大な基地負担を「基地の中に沖縄がある」と表現した。現在も日本の国土面積の0.6%にすぎない沖縄に約70%の米軍専用施設が残っており、「弊害」も集中する。
 95年には米兵による少女暴行事件が発生。これを受け、日米は96年に普天間返還を含む沖縄の基地負担軽減計画を策定した。ただ、大部分は県内移設が前提で、沖縄に負担が集中する構図は変わらない。防衛省幹部は「本土の自治体が基地を受け入れない」と釈明するが、政府が主導して県外移設を含め抜本解決へ大きく動いた形跡は見られない。
 実際、2012年に第2次安倍政権が発足して以降、政府は普天間の名護市辺野古移設にまい進。一方で沖縄振興策の充実を前面に押し出し、県内世論を揺さぶった。岸田政権も安倍、菅両政権の手法を踏襲しており、辺野古移設工事は県側の反発をよそに着々と進んでいる。
 ◇「道半ば」訴え
 政府の姿勢に変化はなく、基地の固定化に対する沖縄の懸念は拭えない。玉城知事は式辞で「政府におかれては、全ての県民が真に幸福を実感できる平和で豊かな沖縄の実現に向け、誠心誠意取り組んでいただきたい」と強く求めた。
 玉城知事はこの後、首相が掲げた基地負担軽減に関し、記者団に「あまりに時間がかかり過ぎる。加速化を伴ってほしい」と要請。式辞で言及しなかった辺野古移設について「私の任期の間は反対堅持だ。それはぶれることはない」と強調した。
 式典には、太平洋戦争末期に米潜水艦の攻撃で撃沈した学童疎開船「対馬丸」に乗船していた高良政勝さん(82)が県民代表としてあいさつに立った。高良さんは「私たちが望んだ沖縄県は、まだ道半ばの感がある」と訴えた。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts