岸田首相、新たな「おわび」避ける 歴史認識の継承表明へ―16日に日韓首脳会談

東京, 3月12日, /AJMEDIA/

岸田文雄首相は16日の尹錫悦韓国大統領との会談で、歴史認識に関して新たな「おわび」の言葉は使わず、1998年の日韓共同宣言など歴代内閣が示した立場の継承を表明するにとどめる意向だ。宣言には植民地支配に対するおわびとともに「未来志向」を明記しており、日韓関係の基盤として適切だと判断した。日本国内の保守派への配慮も背景にある。
16日は会談に続いて共同記者発表や夕食会を調整している。
 韓国政府が元徴用工問題の解決策を発表した6日、首相は記者団の取材に応じ、「日韓関係を健全な関係に戻すものとして評価する」と強調。歴史認識については98年宣言に触れ、「歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ」と明言した。外務省幹部は「今回は謝罪よりも前向きな関係の構築だ」と語った。
 98年宣言は当時の小渕恵三首相と金大中大統領が署名した。植民地支配について小渕氏が「痛切な反省と心からのおわび」を表明。金氏は「不幸な歴史を乗り越えて未来志向的な関係を発展させるため、互いに努力することが時代の要請だ」と応じた。歴史問題に終止符を打つのが狙いだった。
 両国は65年の国交正常化時に締結した日韓請求権協定で、請求権問題の「完全かつ最終的な解決」を宣言。慰安婦問題は95年設立の「アジア女性基金」による償い事業で決着を図った。
 しかし、歴史問題はくすぶり続け、2015年に慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した政府間合意に至ったものの、文在寅政権下で事実上白紙化された。徴用工問題は日本企業に賠償を命じる韓国最高裁判決が18年に確定し、最大の懸案となった。
 首相は15年合意に外相として関わった。今回、従来の立場の踏襲にとどめるのは、改めて「おわび」を表明して未来志向を打ち出しても、再び韓国側に覆される可能性を懸念するためだ。自民党のある保守系議員は「もう一度裏切られれば岸田内閣は終わる」とけん制する。
 日本側の事情には尹政権も一定の理解をしているもよう。韓国政府関係者は「対北朝鮮連携や投資活性化、人的交流拡大をアピールする場にした方がいい」と語り、関係改善を優先する方針だ。

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