岩波ホール、54年の歴史に幕 ミニシアターの先駆け―東京

東京, 7月30日, /AJMEDIA/

 知られざる世界各地の名作を上映し、ミニシアターの先駆けとして親しまれてきた東京・神保町の岩波ホールが29日、54年の歴史に幕を下ろした。新型コロナウイルス感染拡大に伴う経営悪化のためで、営業最終日に駆けつけた映画ファンからは閉館を惜しむ声が上がった。
 岩波ホールは1968年に映画や演劇などの多目的ホールとして開館。2013年に83歳で亡くなった高野悦子さんが長く総支配人を務めた。74年、川喜多かしこさん(93年死去)と共に仏語で「映画の仲間」を意味する「エキプ・ド・シネマ」運動を掲げてからは、大手興行会社が取り上げない名作を上映する単館映画館として運営された。
 日本で上映される機会の少ないアジアや中南米、アフリカなどの映画の上映が中心で、女性監督による作品の公開にも力を注いできた。インドのサタジット・レイ監督の「大樹のうた」のほか、ギリシャのテオ・アンゲロプロス監督の「旅芸人の記録」、香港のメイベル・チャン監督の「宋家の三姉妹」など、これまでの上映作品は66の国と地域、計274本に上る。
 最終日の29日は、平日にもかかわらず多くの客が最終上映を見に訪れた。仕事を早退して来た公務員の女性(36)は「若い人たちがいい作品に出会う機会が失われてしまうのは残念」と寂しそうな表情。長年通ったという高校教員の石坂美樹さん(60)は「根強いファンがいるのでどうにか続けられなかったのか」と惜しんだ。

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