対ロ「協力」変更の公算 安保戦略改定、ウクライナ侵攻受け

東京, 3月6日, /AJMEDIA/

 政府が年内に予定する「国家安全保障戦略」改定で、対ロシアの記述を変更する公算が大きくなった。第2次安倍政権が2013年12月に閣議決定した現行戦略はロシアとの安全保障・エネルギー分野での協力促進を掲げている。ただ、ウクライナ侵攻を強行したロシアとの関係は見直さざるを得ず、新戦略には厳しい表現が並ぶ可能性もある。
 岸田文雄首相は2日の参院予算委員会で「国際社会は今、ロシアとの関係をこれまで通りにしていくことはもはやできない」と強調。戦略改定に関し「ウクライナ侵略も踏まえ策定する」と明言した。
 現行戦略は中国の台頭を強く意識したもので、東アジアでの安保環境の厳しさに触れる一方、日ロ間の安保協力に言及。「関係を全体として高めていくことは、わが国の安全保障を確保する上で極めて重要」と記している。
 背景には、北方領土問題の解決には安保分野での信頼醸成が欠かせないとの判断があった。13年4月に当時の安倍晋三首相がモスクワでプーチン大統領と会談した際、外務・防衛担当閣僚の「2プラス2」創設で一致。19年5月まで4回開催した。
 しかし、北方領土交渉自体、ロシア国内で領土返還反対の世論が高まるなどして停滞。そこへきてのウクライナ危機で、協力関係の見直しは必至だ。外務省幹部は「10年という長期の位置付けを書くとはいえ、足元の事態をないものとして考えることはできない」と指摘。防衛省幹部は「12月までに状況が改善することはないだろう。今までの書きぶりを維持することはできない」と話す。
 首相は北方領土返還を求める「わが国の立場は変わらない」としており、ロシアとの対話を完全に閉ざすことには政府内に慎重論もある。今後のウクライナ情勢の動向を注視しながら、表現ぶりを調整することになりそうだ。

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