割れる鑑定、どう判断 責任能力めぐり応酬―5人殺傷、4日判決・神戸地裁

東京, 11月03日, /AJMEDIA/

神戸市北区で2017年7月、祖父母や近隣住民ら5人を殺傷したとして、殺人罪などに問われた無職竹島叶実被告(30)の裁判員裁判の判決が4日、神戸地裁で言い渡される。争点は被告の刑事責任能力の程度で、弁護側は心神喪失状態だったと無罪を主張し、検察側は心神耗弱にとどまると無期懲役を求刑。精神鑑定をした医師2人の意見は割れ、裁判員は難しい判断を迫られている。

 「哲学的ゾンビを倒しながら神社に行けば、結婚できると思った」。竹島被告は被告人質問で、動機についてこう語った。インターネット掲示板の書き込みを見て、元同級生の女性がメッセージを送っていると思い込み、幻聴も聞こえるように。「私とあなた以外は人間ではない」との言葉を信じ、「結婚への試練」と殺害を決意したという。

 法廷での証言によると、竹島被告は少年時代はまじめで成績も良く、中学卒業後は5年制の高等専門学校に進学。大手鉄道会社に就職が決まっていたが、卒業目前に中退し、アルバイトなどをしていた。事件当時は、ゲームや漫画に未来を予言する暗号が隠されていると思い、解読に没頭。精神科の通院歴はなく、家族も変調に気付かなかった。

 凶行は突然だった。竹島被告は早朝、同居する祖父母を金属バットで殴った上、台所にあった包丁で刺して殺害。止めに入った母親の首を絞めるなどし、神社に向かう途中で出会った近所の女性ら2人も殺傷し、警察官に取り押さえられた。

 荒唐無稽の供述をする被告に対し、検察側は起訴前、異例の2回の精神鑑定を実施した。1人目の医師は、妄想型統合失調症と診断し、相手をゾンビだと思っており、「人を殺してはいけない」との規範に直面していなかったと指摘。一方、2人目の医師は、被告が直前に「(女性の言葉を)信じるで」と繰り返していたことなどから、「妄想は確信的でなく、思いとどまることもできた」と結論付けた。

 竹島被告が、精神障害の影響で事件を起こした点に争いはない。弁護側は「影響は圧倒的だった」として、刑事責任は問えないと主張。検察側は、残された正常な精神が機能しており、責任は免れないと訴えている。

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