入管の医療対応争点 スリランカ女性死亡国賠訴訟―8日に第1回弁論・名古屋地裁

東京, 6月6日, /AJMEDIA/

 名古屋出入国在留管理局の収容施設で昨年3月、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=が死亡した問題で、遺族が国に計約1億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が8日、名古屋地裁で開かれる。原告側は「違法な収容を続け、必要な医療を提供しなかった」と主張しており、入管の対応とウィシュマさんの死亡との因果関係などが争点になる見通し。
 訴状などによると、ウィシュマさんは2017年に来日し、日本語学校に通うなどしたが在留期間が過ぎ、20年8月に名古屋入管の施設に収容された。21年1月ごろから嘔吐(おうと)を繰り返すなど体調が悪化し、同3月に死亡した。
 ウィシュマさんは収容後に体重が激減し、亡くなる3週間前の尿検査では、飢餓状態を示す異常な値が出ていた。身体を起こせないほど衰弱し、何度も治療を求めたが、職員は詐病を疑い、点滴や入院などの医療措置を怠ったとされる。
 出入国在留管理庁は昨年8月、医療体制に不備があったとする調査報告書を公表。一方で、ウィシュマさんの死亡は「病死だが複数の要因が影響した可能性がある」とし、入管の対応との関係について明言を避けた。
 原告側弁護団の指宿昭一弁護士は「追い込んで帰国させるための意図的な医療放置により死亡させた」と批判。収容中の様子を記録した監視カメラ映像について、入管は全面開示を拒否しているが、原告側は真相究明に不可欠として証拠提出を求めており、法廷での上映を目指す。職員や医師の証人尋問も要求するという。
 入管施設では収容された外国人の死亡が相次いでいるという。指宿弁護士は「私たちが求めているのは、死んでしまいそうな人がいたら病院に連れて行ってほしいという当たり前のこと。裁判で責任を問うことができれば、入管行政は大きく変わるはずだ」と力を込めた。
 ウィシュマさんの妹で原告のワヨミさん(29)とポールニマさん(27)は3日、取材に「入管は人間の命をもてあそんでいるのではないか。裁判は初めてで不安だが、負けずに闘いたい」などと話した。

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