バイデン氏、問われる「戦時大統領」 一般教書演説

東京, 3月3日, /AJMEDIA/

バイデン米大統領は1日の一般教書演説で、ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領との対決姿勢を鮮明にし、内外に連帯を呼び掛ける「戦時大統領」の振る舞いを見せた。米国では有事の際、軍最高司令官である大統領の下に国民が結集する伝統がある。だが、バイデン氏がこの機会を生かせるかどうかは不透明だ。
 米国の戦時大統領としては、2001年の米同時テロ後に「対テロ戦争」を宣言したブッシュ(子)大統領(当時)の支持率が約9割に達した例がある。ブッシュ氏は03年の一般教書演説で、イラク侵攻を主張した。トランプ前大統領も新型コロナウイルスへの対応で、自らを「戦時大統領」と規定した。
 ブッシュ氏の対テロ戦は泥沼化し、トランプ氏はコロナ禍を軽視したことで、それぞれ政権末期に求心力を失った。国が一つにまとまるどころか、両氏のかじ取りが今日の米国の弱体化を招いた事実は否めない。
 バイデン氏はどうだろうか。昨年1月の就任とともに、過度な対外関与を見直し国民の利益を第一に考える「中間層の外交」を打ち出した。しかし同年8月のアフガニスタン撤退の混乱を機に支持率は下降。米国の「内向き」志向がウクライナ危機を招いたとの批判さえある。
 バイデン氏は演説で、ロシアを念頭に「民主主義と専制主義の戦いで、世界は明らかに平和と安全の側を選んでいる」と強調した。しかし民主主義を支える中間層の再生は遅々として進まない。看板政策の子育て支援や気候変動対策を盛り込んだ大型歳出法案は、仕切り直しを余儀なくされている。
 バイデン氏は、西側諸国で進められた新自由主義が「経済成長の鈍化、賃金の低下、財政赤字の拡大、この100年近くで最も大きな富裕層とそれ以外の人々の間の格差をもたらした」とも述べた。バイデン氏は専制主義と戦うと同時に、そうした米社会の病理に象徴される自由の矛盾に立ち向かわねばならない、近年で最も厳しい「戦時」に直面している。

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