インド、中国けん制へ対米接近 兵器のロシア依存転換も

東京, 6月24日, /AJMEDIA/

【ニューデリー時事】インドの米国接近は、係争地を抱える中国へのけん制や、兵器調達先の多様化が狙いだ。インドは冷戦期から同盟を組まず、独自の全方位外交を展開してきたが、利害の一致する米国との関係は現在「歴史上、どの時期よりも緊密」(専門家)になっている。
米インド、人権や対ロシアで温度差も 中国に対する利害は一致

 「米印関係の歴史で、特別に重要な日だ。われわれの戦略的パートナーシップに新たな章が加わった」。22日に行われた米印首脳会談後の共同記者会見で、モディ首相は成果を誇った。
 インドは日米オーストラリアとの連携枠組み「クアッド」の一角を占める。事実上の「対中包囲網」と見なされているが、インドはこれまで「軍事同盟ではない」と繰り返し表明。米国と並ぶ最大の貿易相手である中国を刺激しないよう努めてきた。
 一方で、近年は対中強硬姿勢を鮮明にしている。2020年6月にインド北部の国境地帯で中印両軍が衝突し、双方に45年ぶりに死者が出たことがきっかけだ。自国の「裏庭」と位置付けるインド洋で中国が活動を活発化させていることにも、インドは神経をとがらせてきた。モディ氏は米上下両院合同会議での演説で「威圧と対立の暗雲がインド太平洋に影を落としている」と、名指しこそ避けつつ中国への警戒感をあらわにした。
 インドのシンクタンク「政策研究センター」のスシャント・シン上席研究員は「米国の対中政策が攻撃的になってきた同じ時期に、中印国境で危機が起きた」ことが米印接近の要因だと分析。経済規模や軍事力で、まだ中国と開きがあるインドにとって「中国の圧力に対抗するには、米国との連携が必要だ」と指摘する。
 世界屈指の兵器輸入国でもあるインドは、これまでロシアに調達の大部分を頼ってきた。しかし、ウクライナ侵攻の影響で供給が滞ったことで「ロシア離れ」が加速。今回合意したインド軍の戦闘機用エンジンの共同生産や米国からの無人機購入は、兵器の国産化や調達先の多様化に向けた取り組みの一環だ。
 だが、伝統的に個別のテーマごとに連携相手を選び、特定の陣営にくみしない外交を進めてきたインドが今後、米国と完全に歩調を合わせるとは考えづらい。シン氏は「インドは西側陣営にさらに近づくだろうが、その一部にはならないだろう」と予想した。

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