いま踏切のどこに?警報鳴っても分からない視覚障害者の安全は

東京, 10月06日, /AJMEDIA/

「踏切の音が鳴っていても、自分が遮断機の中にいるのか外にいるのか分からないことがある」

おととし静岡県三島市で、視覚障害のある男性が踏切の中で列車にはねられて死亡する事故が起きました。そのとき、男性は危険な場所に立っている自覚がなかった可能性があるとみられています。

事故防止のカギは、視覚障害者を安全に誘導するための点字ブロックの設置です。男性の事故から2年、国土交通省は点字ブロックなどの誘導表示の設置基準を作るための実験を始めました。

自宅近くの踏切で…
おととし8月、静岡県三島市の踏切事故で亡くなった会社員の佐藤一貴さん(26)。生まれつき左目の視力はなく、右目にも弱視の視覚障害があった佐藤さんは、自宅近くの踏切の中に取り残され、列車にはねられて死亡しました。

NHKが事故当時の状況について取材を進めたところ、現場の踏切には視覚障害者を安全に誘導するための点字ブロックなどはなく、佐藤さんは警報器が鳴った時に踏切の内側に立っていることに気づいていなかった可能性があったことが分かりました。

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視覚障害者の安全どうすれば
視覚障害者が安全に踏切を渡れるようにするにはどうすればいいのか。

国土交通省のガイドラインによりますと、踏切の中にいることに視覚障害者が認識できるようにすることが重要だとしていて、踏切の出入り口を示す「誘導用ブロック」、そして踏切内であることを示す「誘導表示」をともに設置することが望ましいとしています。

佐藤さんの父親「点字ブロック 早く導入を」
事故から2年、佐藤さんの父親は、NHKの取材に対し「息子の事故のあとも踏切事故は発生している。視覚障害者が日頃から頼りにしているのは点字ブロックなので、事故を防ぐために、現在、道路などに設置されているブロックを踏切にも早く導入してもらいたい」と話しています。

設置進まず…背景は
佐藤さんの事故の後、去年4月にも奈良県大和郡山市で目の不自由な女性が踏切内で列車と接触して死亡する事故が起きていました。

国土交通省は去年6月、踏切内の道路に誘導表示の設置を促すガイドラインを作成しましたが、ことし3月末の時点で、誘導表示が設置された踏切は全国でわずか17か所にとどまっています。

誘導表示について道路を管理する自治体からは、形状や配置などの基準がなく、設置が難しいという声が寄せられているということです。

当事者がわかる形状や配置とは
こうした中、国土交通省は誘導表示の設置基準を作成するための実験を5日、茨城県にある踏切を模した施設で行いました。

実験では、踏切内の道路に突起物の形状や配置を変えた4つのパターンの誘導表示が設けられ、視覚に障害がある人が実際に歩いて
▽踏切内にいることを認識できるかや
▽誘導表示からそれることなく通過できるか、

▽予告なしに遮断機や警報器を作動させ、その場合でも、安全に踏切の外に出ることができるか、
▽突起物がある誘導表示があっても車いすの利用者が支障なく通行できるかを確かめていました。

設置基準を年内にも作成へ
参加した視覚に障害のある人たちからは、
▽「横断歩道の誘導表示で使われるようなものとは異なる特殊な形状のほうが踏切内に入ったことがわかりやすい」とか
▽「警報器が鳴った時に自分が踏切内のどの位置にいるかわからず不安になった」などといった意見が出ていました。

国土交通省は、実験結果を分析したうえで、踏切内の誘導表示の設置基準を年内にも作成する方針です。

佐藤さんの父親「よりよいものを作って」
おととし踏切事故で亡くなった佐藤さんの父親は、こうした国の対応について、「視覚障害者は踏切の音が鳴っていても、自分が遮断機の中にいるのか外にいるのか分からなくなることがある。今回の実験のように障害のある方が参加した上で、よりよいものを作って広めていってほしい」と話していました。

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