「家族の思いに応えたい」 不明者捜し続けるボランティア―知床観光船事故、23日で1年

東京, 4月22日, /AJMEDIA

北海道・知床半島沖で26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故から、23日で1年となる。いまだ6人の行方が分かっていない中、ボランティアで捜索してきた道内の消防士中島圭一さん(37)は「家族の思いに応えたい」と、今後も続ける考えを示す。これまでの捜索活動を収めた動画の公開も始め、事故の風化防止にも取り組む。
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 登山が趣味で知床の地形に詳しかった中島さんは昨年5月、捜索に初めて参加し、同10月まで計3回加わった。海岸線を歩き、目視で手掛かりを捜した。泊まりがけで行った8月には、乗船者の頭蓋骨を発見。ボランティアの仲間と交代しながら遺骨を運んだ。「悲しい気持ちと、家族の元に帰ることができて良かったという気持ちが半々だった」と振り返る。
 23日にはボランティア仲間とともに、初めて乗客家族に対し捜索活動の報告会を行う。きっかけは、8月に遺骨を発見した時、「顔も知らない人が遺体を見つけ、持ち運んだことを遺族はどう思うのか」と感じたことだ。「どういう人が捜索しているのか、家族に知ってもらうべきだ」という思いが湧き上がった。「お互いの顔が見える環境をつくりたい」と期待する。
 事故の風化を防ぐため、今年1月にはこれまでの活動の様子を収めた動画をウェブ上に公開した。険しい崖をロープを伝って登る様子や、海水に漬かりながら岩場を進む場面が映る。海難事故が起こるたび、教訓が引き継がれていない印象を持ったという中島さん。「知床は美しいが、厳しい環境になれば大変な事故が起こることを知ってほしい」と力を込める。
 昨年の捜索は、海が荒れ、水温も低くなることから、10月9日を最後に中断していた。今後の捜索は乗客の家族の意向を第一に考えるが、「不明者がまだ寂しい海の中にいると思うと居ても立ってもいられない」。そのため「(捜索を望む)声が少しでも聞こえてきたら、それに応えたい」と心に決めている。

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