「圧力」文書、政権の火種に 野党追及、岸田首相は信頼性に疑義

東京, 3月4日, /AJMEDIA/

放送法の解釈を巡り、安倍政権が総務省に圧力をかけた記録とされる文書が、国会審議の新たな火種に浮上した。野党の追及に対し、当時総務相だった高市早苗経済安全保障担当相は、内容を全面的に否定。岸田文雄首相も「信ぴょう性」を盾に論評を避けた。
「全くの捏造(ねつぞう)文書だ」。高市氏は3日の参院予算委員会で、文書を入手した立憲民主党の小西洋之氏にこう反論。小西氏が「捏造でなければ閣僚・議員を辞職するか」と迫ると、「結構だ」と言い切った。
 小西氏によると、文書は総務省の内部文書。同省は安倍政権下で、放送法が定める政治的公平性に関し、「放送局の番組全体を見て判断する」との従来の解釈に、「一つの番組でも判断できる」との新たな解釈を加えた。文書には、当時の首相官邸が解釈「補充」を同省に迫った経緯が詳述されている。
 この中には、安倍晋三首相(当時)が高市氏との電話で「今までの放送法の解釈はおかしい」と主張する場面もあった。小西氏から事実関係を問われ、高市氏は会話自体を否定。「信ぴょう性に大いに疑問を持っている。非常に悪意を持って作られた文書だ」と断じた。
 文書によると、官邸内で解釈「補充」を強く求めたのは礒崎陽輔首相補佐官(当時)だ。総務省幹部に「この件は俺と総理が2人で決める話」と宣言。「俺の顔をつぶすなら、首が飛ぶぞ」「無駄な抵抗はしない方がいい」などの発言も記されていた。
 首相秘書官の中には「言論弾圧ではないか」と難色を示す声もあったが、礒崎氏は特定のテレビ番組を名指しし、「あんなのが成り立つのはおかしい」と語ったという。
 小西氏はこうした内容を紹介しつつ、首相に「時の権力者が特定番組を狙い撃ちにして解釈を改変していいのか」と迫った。しかし、首相は「発言が本当か確認できない」「正確性や正当性が定かでない」とかわし続けた。
 質疑に先立ち、小西氏は委員会での文書配布を認めるよう要請したが、与党は「総務省の文書か精査中だ」と拒否した。
 立民は「安倍政権の負の遺産」(幹部)と位置付け、国会審議で引き続き追及する構え。ただ、旧民主党時代の偽メール問題で痛手を負った経験があるため、深追いをためらう声もある。
 「総務省が文書の真贋(しんがん)を認めるか、認めないか。こうしたことをわれわれも精査したい」。泉健太代表は3日の記者会見で、慎重な姿勢を崩さなかった。

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