闇バイト「破滅しかない」 元メンバーら後悔の日々―比拠点の特殊詐欺グループ

東京, 3月5日, /AJMEDIA/

全国で相次ぐ強盗事件の指示役が関与したとされるフィリピンの特殊詐欺グループは、「闇バイト」を通じてメンバーを集めていた。「『粛正』が怖くて日本に帰れなかった」。元メンバーは個人情報を握られ抜け出せなくなった状況を振り返る。別の詐欺グループでリーダーを務め、服役経験もある男性は「人生の破滅しか生まない。一時の感情や目先の金で考えないで」と警鐘を鳴らす。
「『どこまでも追いかける。親の所もね』と言われ、帰る勇気が出なかった」。フィリピンの特殊詐欺グループの元メンバー阿部隆行被告(40)は2月、詐欺罪などに問われた公判でこう証言した。
 被告人質問で闇バイトに応募した経緯について、「借金があり『リゾートバイト』の文言に引かれた」と明かした。2018年8月にフィリピンに渡航するまでの間、求められるまま自身の住民票や実家の住所を勧誘役に送ったという。
 現地到着後、「仕事」が特殊詐欺に関するものと聞かされた。「ここまで来てできないというのは通らない」。グループのメンバーに念を押され、「やるしかない」と自分に言い聞かせた。
 その後、現地での滞在は4年弱に及んだ。「やめたい気持ちは常にあった」と罪悪感を明かす一方、日本にいる家族に危害が加えられることを心配し「逃げられなかった」と振り返った。
 求刑は懲役7年で、今月9日に判決が言い渡される。「高齢の祖母にもう会えないかもしれない」と弁護士に告げられ、「さみしい」と言葉を詰まらせた。
 別の特殊詐欺グループ元リーダーのフナイムさん(42)=仮名=は「目先の金と欲望のためだけだった」と当時の心境を語る。懲役5年4月の実刑判決を受け、服役を終えた現在はSNSで詐欺防止の活動に取り組む。
 20代前半の頃、職場の客に誘われ、特殊詐欺を始めた。メンバーから金をもらったり、食事をおごってもらったりするうち、組織に深く入り込んだ。「抱き込み方がうまく、抜けられなかった」という。他のメンバーが暴力団の名前を挙げ、関与をほのめかすのを聞き、恐怖も感じた。
 フナイムさんの元には、闇バイトから抜け出せずにいる人からの相談が絶えない。伝えたい言葉がある。「闇バイトは使い捨て。手を出したら人生は破滅する。一時の5万、10万円のためにやるんですか」。

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