自民、負のイメージ払拭に必死 野党「政治とカネ」照準も乱立―衆院千葉5区補選ルポ

東京, 4月16日, /AJMEDIA/

衆院議員だった薗浦健太郎が政治資金パーティー収入の過少記載で議員辞職したことに伴う千葉5区補欠選挙。薗浦が所属していた自民党の候補は、まとわりつく負のイメージの払拭(ふっしょく)に必死だ。これに対し、野党は候補が乱立。「政治とカネ」の問題に照準を合わせるが、批判票の受け皿を一つにできないまま選挙戦に突入した。(敬称略)
若者よ、投票に行こう!たかまつななの主張

 ◇ガラス張りの街宣車
 「わが国を守れるのは自民党と公明党の連携のみだ」。告示日の11日、自民党新人の英利アルフィヤは千葉県市川市で開いた出陣式で、クリーンさをアピールする白いジャケット姿でこう力を込めた。中国・新疆ウイグル自治区出身の両親を持ち、国連職員としてロシアのウクライナ侵攻に対応した経験を訴える。
 昨年12月の薗浦の辞職後、逆風が予想された補選で自民党は公募を実施。応募者70人ほどの中から、昨夏の参院選比例代表に立候補の経験(落選)がある34歳の女性、英利に白羽の矢を立てた。
 千葉5区は市川市の大部分と浦安市全域で構成され、隣接する東京都内に通勤・通学する「千葉都民」が多い土地柄。「国際色豊かな若手の女性」はうってつけと判断された。
 陣営のイメージカラーは爽やかな印象を与える水色を選んだ。ガラス張りの街宣車で活動を展開する英利が「政治とカネ」に言及することは、ほとんどない。「党として反省は必要だが、英利は薗浦と別人だ」と陣営関係者は強調する。
 ◇ちらつく大物の影
 しかし、イメージ重視の戦略は容易でなく、自民党の分析では党支持層にすら浸透し切れていないことが判明。選挙戦3日目の13日、英利は街頭演説で、国際情勢よりも地元の農産物や中小企業など身近な話題に重点を置くようになった。支持拡大へ試行錯誤が続く。
 英利が仮に当選しても、いずれ薗浦が千葉5区に戻ってくるのではないか―。今回の選挙ではこんな見方が静かに広がり、組織がまとまりを欠く一因となっている。
 薗浦は麻生派会長の党副総裁麻生太郎の側近。そして、英利は参院選でも麻生派の支援を受けた経緯がある。麻生の意向で英利が将来的に参院へ転出するというシナリオが取り沙汰されるのは、こうした事情が重なるからだ。英利を推薦した公明党からは「内輪の論理にお付き合いできない」との声が漏れる。
 ◇幻のバーター案
 「まず皆さまに思い出してほしい。この補選がなぜ起きたかということを」。11日に浦安市でマイクを握った立民新人の矢崎堅太郎が最初に訴えたのは「政治とカネ」だった。
 薗浦の辞職から5日後の昨年12月26日、立民県連は2021年衆院選でも千葉5区から立候補した矢崎の擁立を発表。自民党批判の受け皿をつくるため野党候補の一本化を目指した。
 日本維新の会との交渉に向け、立民内で検討されたのが、千葉5区補選と維新が重視する和歌山1区補選のバーター。和歌山で維新の支援に回る代わりに、千葉では自前候補を立てないでもらう案だ。だが、立民に代わる野党第1党を目指す維新は相手にせず、幻に終わった。
 維新新人の岸野智康は告示日の11日、市川市で街頭演説し、「われわれは批判だけではない。実績を語れる野党が日本維新の会だ」と訴えた。
 共産党は元職の斉藤和子、国民民主党は新人の岡野純子を立てた。各党とも次期衆院選を見据え、党勢拡大に余念がない。
 補選には政治家女子48党新人の織田三江と無所属新人の星健太郎も立候補している。
 
 ◇衆院千葉5区補選立候補者名簿
 英利アルフィヤ 34 元国連職員  自 新
                   推(公)
 岡野 純子   44 元浦安市議  国 新
 織田 三江   41 元信金職員  政 新
 矢崎 堅太郎  55 元県議    立 新
 岸野 智康   28 社団法人代表 維 新
 斉藤 和子   48 元衆院議員  共 元
 星  健太郎  43 元市川市議  無 新
 (注)敬称略。届け出順。年齢は投票日時点。党派名は自=自民、立=立憲民主、維=維新、公=公明、共=共産、国=国民民主、政=政治家女子、無=無所属。丸かっこは推薦政党。

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