“サイボーグ昆虫” 理研など開発 昆虫に電子部品付け遠隔操作

東京, 9月6日, /AJMEDIA/

昆虫に電子部品を取り付けてその動きを遠隔操作できるいわゆる「サイボーグ昆虫」を開発したと理化学研究所などの研究グループが発表しました。将来的には、災害現場での捜索などに応用できるのではないかとしています。

発表したのは、理化学研究所の福田憲二郎専任研究員などの研究グループです。

「サイボーグ昆虫」は、昆虫の体に電子部品をつなぐことでその動きを操作できるようにするもので、世界的にも研究が進められています。

研究グループは、体長6センチほどの「マダガスカルゴキブリ」の体に厚さ4マイクロメートルという食品用のラップより薄い太陽電池や無線機器などを取り付け、腹部にある「尾葉」と呼ばれる感覚器官に電気刺激を与えることで進む向きを変える実験に成功したということです。

研究グループは、将来的には、小型カメラやセンサーを組み合わせることで、人間が立ち入るのが難しいがれきの中での捜索や、有害なガスが発生している災害現場での活動などに応用できるのではないかとしています。

福田専任研究員は「今後さらに改良を重ね、災害現場で活躍できるサイボーグ昆虫を目指す」と話しています。

「なぜゴキブリ…?」
「サイボーグ」化に選んだ昆虫がなぜ、カブトムシやバッタなどではなく「マダガスカルゴキブリ」なのか。

そもそも昆虫型のロボットを作ればいいのではないか。

そんな疑問を感じた人も少なくないのではないでしょうか。
ロボットよりもサイボーグ
開発者の1人、理化学研究所の福田憲二郎専任研究員によりますと、「昆虫型のロボットと比べて、消費電力の面から『サイボーグ昆虫』のほうが省エネだ」ということです。

たとえば、全身をロボットにするには足の関節なども機械化しますが、実際の昆虫のようにスムーズに動かすのは難しいほか、それらを動かすために多くの電力を消費します。

一方で、「サイボーグ」化すれば、昆虫に電気刺激を与えるだけで行動を一定程度制御できます。
適した昆虫とは?
「サイボーグ」化に向いている昆虫とはどういうものか。

福田専任研究員によりますと選んだポイントは、「大きい」、「しぶとい」、「飛べない」の3点だとしています。
【1、大きさ】
「サイボーグ昆虫」には遠隔で操作するために必要な無線機器などの電子部品を複数装着します。

極めて薄い太陽電池を背負わせて動力源を確保するわけですが、太陽光を受ける面積が広いほうがより活動できるなど、体の大きさは重要な要素の1つとなります。

今回の研究に使われた「マダガスカルゴキブリ」は体長は6センチほど。

ゴキブリの仲間としては大型な部類に入ります。
【2、しぶとさ】
「サイボーグ昆虫」を人間が立ち入るのが難しい災害現場などで活動させるには、過酷な環境に耐えられるとともに寿命の長さがカギとなります。

「マダガスカルゴキブリ」は、環境に対する耐性が比較的高く、飼育下の環境でも数年間生きられるということで、カブトムシやバッタなどに比べて寿命が長く「サイボーグ昆虫」に向いているということです。
【3、飛べないこと】
飛ぶことで活動範囲が広がるのではないかと思うかもしれませんが、無線の届かないところに飛んでいってしまうと、制御不能に陥る可能性が高まります。

その点、「マダガスカルゴキブリ」には羽がなく、歩く動作のみで、飛ぶ心配がないということです。
【4、ほかの利点】
このほか、「マダガスカルゴキブリ」は遠隔操作しやすいという特徴があります。

腹部に「尾葉」と呼ばれる風や振動を感じる感覚器官が左右にあります。

右側の「尾葉」に電気刺激を与えると、右方向に向きを変えて進むことを実験で確認したということです。

こうした理由から研究対象として扱いやすいとして「サイボーグ昆虫」に選んだということです。
【5、課題は】
今後の課題は何か。

1つは“長時間の稼働”です。

開発した“サイボーグ昆虫”は、30分の充電でおよそ2分の稼働が限界。

充電すれば繰り返し動かせますが、研究グループでは電子部品の小型化や性能向上を図り、昆虫本来の運動機能を維持しながら、稼働時間を拡大させる研究を進める方針で、ほかの昆虫への応用にもチャレンジしたいとしています。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts