【地球コラム】トルコ、攻撃ドローンの輸出拡大

東京, 11月14日, /AJMEDIA/

トルコが近年、攻撃ドローン(無人機)の海外輸出を活発化させている。特にウクライナなどロシア周辺国が積極的に導入を進め、これがロシアを刺激して地域情勢に新たな波紋が生じている状況だ。新興国のみならず、北大西洋条約機構(NATO)主要国の英国も注目しているとされ、トルコ製ドローンの存在感は一層増していきそうだ。(時事通信社イスタンブール支局 吉岡良・ハジェル・セズギン)
◇「輸出先は13カ国」
 トルコの攻撃ドローンを代表するのが、防衛企業バイカルが開発した「バイラクタルTB2」だ。昨年はアルメニアとの交戦でTB2を投入したアゼルバイジャンが、係争地ナゴルノカラバフで支配地域奪還を果たした。バイカル社のバイラクタル最高経営責任者(CEO)は今年2月、「(アルメニアは)TB2による攻勢を止めることができなかった」と述べ、その性能をアピールした。
 TB2はシリアやリビアの内戦にも投入され、実戦経験を重ねている。とりわけ「対ロ抑止力の確保」(地元外交シンクタンクのシネ・オズカラシャヒン研究員)を喫緊の課題とするロシア周辺国による導入の動きが目立つ。ウクライナは最近、ロシアの攻撃にさらされる東部ドンバスにTB2を投入したと発表。これに対してロシアのペスコフ大統領報道官は「地域情勢を不安定化させるだけだ」と警戒心をあらわにした。
 トルコは一方で、地対空ミサイルS400の導入などを通じてロシアとの軍事協力を拡大させている。軍事アナリストのチャーラル・クルチ氏は「ウクライナの対ロ国境付近でのTB2運用は、トルコ・ロシア関係の打撃となるのは間違いない」と指摘する。
 このほか、トルクメニスタンが既にTB2を調達。NATO加盟国のポーランドも来年からの導入を計画している。ラトビアやリトアニアも検討しているとされ、バイカル社は10月27日、「(先の予定も含む)輸出先は13カ国となった」とツイッターで明らかにした。
 ロシア周辺国以外では、アフリカ諸国の動きが目立つ。10月半ばにアンゴラやトーゴ、ナイジェリアを訪れたトルコのエルドアン大統領は帰国後の演説で「訪問先の各国がトルコ製ドローンを求めてきた」と述べた。アフリカ諸国では既にモロッコがTB2を調達し、ロイター通信によれば、エチオピアやルワンダも購入を模索している。
◇低コストで英も注目
 一方、NATO加盟国ではポーランドのみならず、英国もTB2の配備を視野に入れているようだ。英国のウォレス国防相は「(TB2がシリアやリビアで)相手の兵力や戦車、ヘリコプターなどに大きな打撃を与えたという情報を得ている」と評価。地元メディアによると、トルコのバランク産業技術相は「英国は真剣だ」と述べ、英国に対して契約に向けた具体案を示したことを明らかにした。
 トルコの識者によれば、英国は現在、攻撃ドローンについては米国やイスラエルから供給を受けているものの、より低コストなTB2に注目しているという。仮に英国がTB2を導入すれば、トルコ製ドローンに対する信頼の裏付けとなり、NATO加盟国内でも導入が加速するという見方もある。

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