「出口」今も見通せず あるじなきアベノミクス

東京, 9月27日, /AJMEDIA/

 安倍晋三元首相が進めた経済政策「アベノミクス」。日本経済は過度な円高や株安から抜け出したが、賃金上昇を伴う好循環は実現せず、新型コロナウイルス禍からの景気回復も遅れている。日銀の大規模金融緩和は今後も続く見通しだが、急激な円安や原材料高への懸念も高まる。あるじなきアベノミクスの「出口」は、今も見通せないままだ。
 2012年12月の第2次安倍政権発足を機に始まったアベノミクスは、長年苦しんだデフレから脱却し、強い日本経済の復活を目指した。強力な金融緩和効果もあり、1ドル=80円台だった円高は大きく転換。日経平均株価は2倍超に上昇し、就業者数も400万人以上増えた。
 一方、成長戦略は不発に終わり、潜在成長率は0%台と低迷。財政面では、首相在任中2回の消費税増税を実施したが、大型経済対策を繰り返す中で国の借金は増大。国債の約半分を日銀が保有するいびつな構図となった。
 足元では、世界的インフレと円安による原材料価格の上昇が企業や家計を直撃。特にインフレ抑制へ利上げを急ぐ米欧と、先進国で唯一マイナス金利を続ける日本との金利差拡大が意識され、今年に入り対ドルで30円程度円安が進んだ。
 輸入物価上昇で、消費者物価指数は日銀が目標とする2%を5カ月連続で上回った。ただ、賃上げを伴う持続的な物価上昇ではないとして、黒田東彦総裁は22日、「当面金利を引き上げることはない」と強調。これを受けて市場は円売りを加速、政府・日銀は24年ぶりの円買い・ドル売り介入で対抗した。金融緩和が招く急速な円安への対応を迫られる悪循環に陥っている。
 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「円安や物価高がどこまでも続くという懸念を和らげるには、金融政策の柔軟化が必要だ」と指摘。来春の黒田総裁の任期終了を機に、2%物価目標と金融政策の妥当性など「出口」に向けた議論が必要との認識を示した。

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