東京, 7月30日, /AJMEDIA/
西アフリカのニジェールで26日に起きた大統領の拘束は、クーデターが続いた隣国のマリやブルキナファソと合わせ、欧米にとってアフリカ大陸に巨大な空白地帯を生むことになる。イスラム過激派や不法移民の問題を考える上で、旧宗主国フランスをはじめとする欧州や米国にとって難題となりそうだ。
EU「クーデター政権は認めず」 AUも強く非難―ニジェール
ニジェールやマリの北部は広大なサハラ砂漠が広がる。ここに10年ほど前からイスラム系武装勢力が拠点を築いている。フランス軍を中心に掃討作戦が続けられてきたが、終わりは見えない。
武装勢力による住民虐殺が繰り返される一方、欧米の関心は過激派組織「イスラム国(IS)」残党のアフリカ流入阻止で、必ずしもアフリカ側と利害が一致するわけではない。「新しいパートナーと組みたい」(ブルキナファソ軍)とマリやブルキナファソからは駐留仏軍が追い出される事態になっている。
こうした国々が期待する相手は、ウクライナ侵攻にもかかわらずロシアだ。フランス軍と違い、軍政でも守ってくれるロシアの民間軍事会社ワグネルは、中央アフリカでの成功もあって、強力な信頼を獲得するに至った。
こうした中で、ニジェールは「軍政に乗っ取られたマリ、ブルキナファソ、チャドに囲まれながら唯一民主主義を維持していたサヘル(サハラ砂漠南部一帯)の例外」(ロイター通信)と位置付けられていた。仏軍1500人のほか、米軍も無人機を操る部隊がニジェールに駐留しているとされ、撤収に追い込まれれば、対イスラム過激派戦略は大きな修正を余儀なくされる。
サハラ砂漠を縦断して欧州へ向かう移民の流れも、通過する関係各国が軒並み「反仏の軍政」となれば、加速は必至の情勢となりそうだ。欧州連合(EU)はイタリアを中心に、地中海沿岸の北アフリカ各国と連携して、密航船の出港を止めるため、新たな基金の創設に動きだしている。
しかし、流入する移民の数が急増を続ければ、こうした対策はすぐに間に合わなくなる。アフリカ西部ガンビアには28日、地中海沿岸のチュニジアから不法移民が送還されたが、人数は40人だった。チュニジアには現在、分かっているだけで2万人を超える不法移民が欧州渡航を待っている。