東京, 7月30日, /AJMEDIA/
石油や天然ガスといった化石燃料に代わる新たなエネルギー源として注目される水素。欧州における水素サプライチェーン(供給網)の中心になることを目指すオランダで、水素製造工場などのインフラ計画が相次いで進行している。南部の港湾都市ロッテルダムでは、英石油大手シェルが二酸化炭素(CO2)を出さずに水素を製造する域内最大規模の工場を建設中だ。
水素エネルギー
北海に面した埋め立て地に位置する水素工場の建設現場周辺には、風力発電機が立ち並んでいた。シェルが2020年代後半の稼働を目指す工場は、洋上風力発電を利用し、環境に優しい「グリーン水素」を1日当たり最大60トン製造することが可能だ。水素を燃料に走行する大型トラック2300台を1日走らせるのに十分な量だという。工場計画には日本企業も参画しており、シェルの幹部は「グリーン水素は、未来のエネルギーシステムにおいて極めて重要な役割を果たすだろう」と意気込む。
計画によると、工場で生産する水素は当初、シェルの石油化学プラント向けにパイプラインで供給。プラントでグリーン水素を使用することで、CO2排出量を削減する。いずれは、水素自動車向けなどに販売することも視野に入れている。
国際物流の要衝であるロッテルダム港では、海外から水素を輸入して貯蔵する構想もある。輸送方法を含め課題は多いものの、港湾局の幹部は「オーストラリアや南米などから水素を調達して、ドイツをはじめとする近隣諸国に供給することも検討中だ」と話す。
オランダ北部フローニンゲン州でも水素インフラの整備計画が策定されている。同州は欧州有数のガス田を抱えるが、採掘の影響で小規模地震が頻発し、住宅が損壊する被害が発生したため、ガス生産の終了が決まった。使われなくなるガス貯蔵施設やパイプラインを転用し、国内外に水素を供給するプロジェクトが浮上している。