東京, 7月17日, /AJMEDIA/
中国北西部、黄河の中流域に位置する寧夏回族自治区で、ワインの生産が進められている。砂漠の気候がワイン用のブドウ栽培に適しているといい、フランスのシャンパン大手「モエ・エ・シャンドン」が参入するなど欧米も注目。習近平国家主席は「道は正しい。歩き続けよ」と号令を掛けており、ワイン分野でも「強国」を目指しているもようだ。
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◇荒れ地がオアシスに
6月上旬、同自治区の区都銀川市を訪れると、黄河に沿って南北に連なる「賀蘭山脈」の麓にブドウ農園が広がっていた。この地域は昼夜の温度差が大きく乾燥した気候で、ワイン用ブドウ栽培の「黄金地帯」とされる。一帯には約3万9000ヘクタールのワイン用ブドウ農園があり、建設中も含め230近いワイナリーが集まる。地元当局者は「20年前は全て荒野だった。荒れ地がオアシスになった」と誇る。
自治区政府はワインツーリズムにも力を入れ、2027年までに農園規模を6万7000ヘクタールに広げる目標を掲げる。生産量も現在の年間約1億4000万本から2倍以上の3億本に増やす計画で、国営新華社通信は「紫の奇跡が起きる」と宣伝する。
◇「世界を驚かせる」
習氏は16年に同自治区を視察した際、「寧夏のワインは市場の潜在力が大きい」と指摘。20年の再訪問では「中国ワインはやがて世界を驚かせるだろう」と述べ、ブランド力向上を指示した。習氏のこの言葉は街の所々で掲げられ、国策としてワイン産業が推進されている。
習氏は国家副主席だった08年にも同自治区のワイナリーを訪れたといい、地元政府関係者は「評価は高かった。(習氏は)寧夏に大きな期待を寄せている」と強調する。
◇所得は平均以下
ただ、ワイン産業で一定の雇用が創出されたものの、同自治区の所得水準は国内の平均を下回る。国家統計局によれば、22年の1人当たり可処分所得は約2万9600元(約57万円)で、31省・市・自治区の20位。順位は10年前とほぼ変わっておらず、沿海部と内陸部の格差は縮まっていない。
また、自治区人口の3割を占める回族のイスラム教信仰は、「宗教の中国化」を進める習政権で厳しく統制されているもようだ。かつて中東風の尖塔(せんとう)やドームを備えていたとみられる銀川市内の複数のモスク(イスラム礼拝所)には、中国風の屋根に「中華民族は一つの家族」という標語が掲げられていた。