東京, 7月15日, /AJMEDIA/
【ニューデリー時事】インド洋の島国スリランカで、経済危機に端を発した抗議活動が激化し政権が倒れて1年がたった。国際通貨基金(IMF)からの金融支援で当座をしのいでいるが、社会保障削減や税負担増で国民生活は困窮。専門職の「頭脳流出」も懸念されている。
汚職撲滅、民営化も必須 スリランカ―アジア経済研究所・荒井氏
「栄養失調や貧困が拡大している。大統領は何の計画も持たず、国民が負担を強いられている。去年より大きな危機かもしれない」。1年前に学生を中心とする大規模デモを率いた一人、ワサンタ・ムダリゲさん(29)は嘆いた。
スリランカは昨年、中国などから借り入れた債務の返済に窮し、事実上のデフォルト(債務不履行)状態に陥った。外貨は枯渇し、輸入に頼っていた燃料や生活必需品が不足。国民の怒りは政権に向かい、長く政界を牛耳っていたマヒンダ・ラジャパクサ首相が失脚した。弟のゴタバヤ大統領も、国外脱出の末に辞任した。
ゴタバヤ氏が強行した無謀な大幅減税が破綻を招いたことを踏まえ、後任に就いたウィクラマシンハ大統領は増税を伴う財政改革に着手した。今年3月、IMFからの金融支援受領を議会で説明した際には「もはや破産国とは見なされないだろう」と強調。IMFの求める緊縮策実行への理解も求めた。
しかし、最大約70%に達したインフレに増税や歳出削減が重なり、国民生活は疲弊。国連食糧農業機関(FAO)によると、国民の17%に当たる約390万人が、食料確保に不安を感じている。
最大都市コロンボに住む元会計士の70代男性は、AFP通信に対し「去年はお金があったが商品がなかった。今は商品はあるがお金がない」と窮状を訴える。歳出削減の一環で生活保護が打ち切られ、持病のぜんそくのための吸入器を購入できなくなったという。
一方、比較的余裕のある専門職が重い負担を嫌い、国を離れる動きも加速している。現地メディアによると、医師の退職が相次ぎ、手術や治療に支障を来すケースが出ている。大学教授やパイロットの離職も続出。昨年のパスポート発行数は91万1689件に上り、過去5年間で最多となった。
ムダリゲさんは、デモでゴタバヤ氏らを追い出し、「民衆の力」を示したことは大きな勝利だったと自負する。その上で、現在の苦境を踏まえ「真の体制変革が必要だ」と力を込めた。