東京, 7月03日, /AJMEDIA/
岸田文雄首相が意欲を示す憲法改正を巡り、今秋召集が想定される臨時国会では緊急事態条項に関する改正条文案の作成が進むかが焦点となる。首相は来年9月末までの自民党総裁任期中の改憲実現を訴えており、自民などは来年1月召集の通常国会での改憲発議を目指して調整を加速させる方針だ。
改憲条文案、次期国会焦点に 公明・北側氏
首相は通常国会が閉幕した6月21日の記者会見で、「目の前の任期において憲法を改正するべく努力する」と強調した。改憲に関する国民投票法は、国会で発議をした日から起算して60~180日以内に国民投票を行うと定める。来年9月までの改憲達成には、今秋の臨時国会で条文案を取りまとめ、来年の通常国会で発議する必要がありそうだ。
新型コロナ禍やウクライナ危機をきっかけに、国会では緊急事態条項に関する改憲討議が活発化。先の通常国会の衆院憲法審査会で2回目の論点整理が示され、自民、公明、日本維新の会など5会派が緊急時の「議員任期延長が必要」との立場で一致。今後は延長期間など具体的な制度設計で調整を進める。立憲民主党や共産党は任期延長に反対し、折り合う見通しは立っていない。
与党筆頭幹事の新藤義孝氏(自民)は「緊急事態条項の方向性を議論する時期に来ている」と表明。公明の北側一雄憲法調査会長も6月22日の記者会見で「具体的な改正条文案も念頭に、多くの会派間で合意形成が図れるか。臨時国会での焦点になる」と指摘した。
一方、参院憲法審は、衆院に比べて議論が遅れ気味だ。参院は憲法54条が定める「緊急集会」などに関する論点整理を今後行う予定。与党筆頭幹事の山本順三氏(自民)は「衆参で温度差がある」と停滞を認める。
改憲推進派にとって、公明内の衆院議員と参院議員で足並みが乱れていることも懸念材料。任期延長に関し、衆院は「幅広い合意が形成できるよう、さらに論議を深めたい」(北側氏)と前向きだが、参院は「基本は緊急集会で対応する」(西田実仁氏)と慎重だ。
自民内には緊急事態条項よりも、憲法9条への自衛隊明記や、国政選挙の「1票の格差」是正に関し地方の定数を減らさないようにする改憲を優先すべきだという意見も根強い。首相が秋の臨時国会で衆院を解散すれば改憲スケジュールにも影響しそうだ。改憲に積極的な維新が立民から「野党第1党」の座を奪えば改憲機運が高まる可能性もある。